「黒字リストラ」の標的になった人は…
それを端的に示すのが、業績が好調でも、人員削減のため、早期・希望退職を募る「黒字リストラ」を上場企業が相次いで実施していることである。2025年には、パナソニックホールディングス、三菱電機、明治ホールディングス、オリンパスなどが発表した。
いずれも名門企業であり、典型的な“いい会社”といえる。就職が決まったときには、本人も家族も大喜びしたはずだ。ところが、何十年も勤めたあげく、まだ定年を迎える年齢でもないのに、「あなたはもううちの会社には必要ない」という事実を遠回しにせよ突きつけられ、「早く辞めてくれ」みたいなことをやんわりと告げられる。
勤務先の会社から早期退職を勧められて落ち込み、不安になったと訴えて私の外来を受診した50代の男性が何人かいる。最大の不安は、「退職後に同程度の収入を得られる仕事に就けるのだろうか」「もし次の仕事が見つからなかったら生活していけるのだろうか」ということだとか。
学歴社会を支えていた日本型雇用システム
実際、50代で大企業を退職した後、次の仕事を見つけるのに苦労した話はしばしば耳にする。まだ子どもの教育費が必要かもしれないし、住宅ローンも残っているかもしれない。だから、気持ちが落ち込んで悲観的になるのも無理からぬ話だ。なかには、頭痛や吐き気などの身体症状に悩まされる人もいる。
「黒字リストラ」の背景には、新卒一括採用、年功序列、終身雇用などの日本型雇用慣行が限界を迎えており、維持するのが困難になりつつあるという事情があるようだ。それだけ企業に余裕がなくなっているわけで、業績悪化によってリストラを余儀なくされた企業も入れると、人員削減に踏み切った企業は相当な数にのぼる。この流れは今後も続くと考えられる。
とすれば、“いい学校”“いい会社”に入れば、経済的に安定した生活を送れて幸福になれると思い込んで頑張っても、本当に報われるのかと疑わずにはいられない。
