いい大学、いい会社に入れば幸せなのか。精神科医の片田珠美さんは「新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった日本型雇用慣行が限界を迎えており、受験や就活で努力しても報われるとは限らなくなってきている」という――。

※本稿は、片田珠美『生きづらさの正体』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

安田講堂 東京大学
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「いい学校→いい会社→幸福な人生」?

「“いい学校”に入らなければならない」と思い込んで、というか親や教師から教え込まれ、頑張ってきた人は実に多い。日本は学歴社会であり、高偏差値の“いい学校”に入り、無事卒業したら“いい会社”に入ることこそ、高収入を得て安定した生活を送り、幸福になるための近道だと多くの親が思い込んでいるように見受けられる。

そういう親は「教育による社会的上昇」を信じて、わが子にハッパをかける。それを真面目な“いい子”ほど真に受けて頑張るわけである。

なかには、「テストでいい点を取ったら、ほしいものを買ってあげる」と条件付きの愛情を示したり、「脱落したら負け組になるぞ」と脅したりしながら、子どもに勉強をいる親もいるようだ。そのせいか、われわれ精神科医のもとを訪れる子どもが少なくない。その弊害が大人になってから出てくる場合もある。

「僕はだまされた」中学生の抵抗

たとえば、目覚ましい進学実績を誇る私立の中高一貫校に無事入学したものの、優秀な生徒ばかり集まっている学校で勉強についていけず、成績も下位を低迷したあげく、不登校になってしまった少年は、その後もひきこもり生活を続け、やがて母親に暴力を振るうようになった。

理由は、「小学生のときにもっと遊びたかったし、サッカーもやりたかったのに、『今勉強して中学受験がうまくいったら、いくらでも遊べる』とお母さんから言われたから頑張った。でも、やっと中学校に入ったら、また勉強、勉強とうるさく言われ、成績が悪いと怒られた。僕はだまされた」からだという。

あるいは、実家が開業医で、継がなければならないため、医学部を受験したが、なかなか合格できなかった男性は、何年も浪人してやっと私立医大に入学した。その際、父親は入学金に加えて相当な額の寄付金を払ったらしい。しかし、今度は留年を繰り返し、うつになって休学することになった。