水分補給のメインにするのはNG

そのため、適量の範囲内で飲む分には、コーヒーや緑茶による脱水リスクを過度に心配する必要はないというのが現時点での研究知見だと言えます。

むしろ、適切に用いればカフェインの覚醒作用や疲労感を和らげる効果は、日中の仕事のパフォーマンス維持にプラスに働いてくれる側面もありますNegaresh et al., 2026

ただし、だからといって「夏場の水分はすべてコーヒーやお茶で済ませていい」というわけではありません。いくら脱水リスクが低いとはいえ、カフェインに多少の利尿作用や体温上昇の懸念がある以上、それを「熱中症予防のメイン飲料」に据えるのはベストとは言えません。

オフィスでのデスクワーク中に楽しむお茶やコーヒーは「嗜好品」として適量にとどめ、これから外回りに出る直前や、大量の汗をかくような「暑さのリスクが高まる場面」では、効率よく水分を保持できる水や麦茶を優先して飲むようにするのが望ましいでしょう。

カフェイン飲料は「状況に応じて選択する飲料」と理解しておくことが、熱中症予防における正しい位置づけといえます。

白いカップに入れたブラックコーヒー
写真=iStock.com/kyoshino
※写真はイメージです

スポーツドリンクの「誤解」

熱中症対策というと、まずスポーツドリンクを思い浮かべる方もいると思います。汗で失われる水分や電解質を効率よく補えるという意味では、確かに優れた飲料です。激しい運動や屋外作業などで大量に発汗する場面では、水だけよりもナトリウムを含むスポーツドリンクの摂取が有効であることは医学的にも実証されていますSeo et al., 2014

しかし注意したいのは、スポーツドリンクは「熱中症対策に有効な飲み物」であっても、「普段の水分補給に最適な飲み物」とは限らないという点です。

市販のスポーツドリンクには、飲みやすくするために多くの糖分が含まれており、製品によっては500mlあたり数十グラムもの糖が含まれていることもあります。

WHO(世界保健機関)は、1日の糖類摂取量を総エネルギーの5%未満(成人で約25g相当)に抑えることを推奨していますが、中にはスポーツドリンク1本でこの目安に達してしまう製品もありますWHO, 2015

そのため、エアコンの効いた室内でのデスクワークなど、ほとんど汗をかかない状況でスポーツドリンクを習慣的に飲み続けると、糖分の過剰摂取につながってしまう場合があるのです。