「ペットボトル症候群」のリスク
さらに、過剰な糖質摂取が引き起こす、注意すべき状態に「清涼飲料水ケトーシス」、いわゆる「ペットボトル症候群」というものがあります。
糖分の多い飲料を大量かつ継続的に摂取すると、急激な高血糖状態が引き起こされ、血液の浸透圧が高くなるため、脳は脱水が起きていると勘違いして激しい口渇感を感じさせます。そして、この口渇感によりスポーツドリンクの追加摂取を重ねることで、血糖値がさらに上昇していくという悪循環が形成されるのです。
血糖値が異常な高値に達すると、糖を処理するホルモン(インスリン)の働きが追いつかなくなるため細胞が糖をうまく吸収できず、「極度のエネルギー飢餓状態」に陥ります。すると身体は生き延びるために、代わりに体内の脂肪を猛烈に分解し始めます。
このとき副産物として生まれる酸性物質「ケトン体」が血液中に溢れ、本来は弱アルカリ性であるはずの血液を急激に酸性へと傾かせます。これが、清涼飲料水ケトーシスがさらに進行した病態であり、命に関わる「糖尿病性ケトアシドーシス」という状態です(Delaney et al., 2000)。
このアシドーシス(血液が酸性に傾いた状態)に至ると、倦怠感や吐き気、腹痛が現れ、意識障害(昏睡状態)へと進行します(杉山ら. 2015)。さらに急激な脂質代謝の異常から「重症急性膵炎」などの多臓器不全を併発するリスクもあり、最悪の場合は死に至ることもあります。
場面によって飲み物を使い分ける
ペットボトル症候群と診断される目安として、100gあたりの炭水化物が10g程度の飲料を1日1.5リットル以上、1カ月以上継続飲用している場合に該当するとされています(全国清涼飲料連合会, n.d.)。国内の報告によると、この病態で救急搬送された患者さんの約8割が、それまで糖尿病の指摘を受けたことのない20代〜40代の若年・現役世代の男性でした(Tsujimoto et al., 2022)。
特に肥満傾向のある人や健康診断で「血糖値がやや高め」「糖尿病の予備軍」などと指摘されたことのある人は発症リスクが高いと報告されているため、普段から甘い飲料を飲む習慣がある人は、一度、習慣を見直すことをお勧めします。
このように述べるとスポーツドリンクが悪者のように聞こえるかもしれませんが、大切なのは場面によって使い分けるということです。
室内での活動が中心であれば日常の給水は水や麦茶で十分ですが、大量の発汗が見込まれる屋外作業や運動時のように熱中症リスクの高まる環境では、電解質を効率よく補えるスポーツドリンクや経口補水液を意識的に選ぶようにしましょう。
なお、経口補水液についても正しい理解が必要です。市販の経口補水液は、本来は下痢や嘔吐などに伴う脱水時の水・電解質補給のために作られた、病者用の飲料です。スポーツドリンクに比べてナトリウムやカリウムが約3~4倍多く含まれているため、脱水状態ではない人が日常的に飲むものではありません(消費者庁, 2024)。
そのため、熱中症や脱水のリスクが高い場面においてのみ、適切な量を摂取することが大切です。

