マスク氏に期待した日本人社員の末路
解雇された社員には、日本人エンジニアもいた。
「あのイーロン・マスクが来るのかと、わくわくする感じがあった」
ツイッターのサンフランシスコ本社で勤務していたイハラさんは、マスク氏が買収を表明した時をそう振り返る。
イハラさんは、ツイッターのタイムラインの表示順を決める機械学習(ML)を担当する十数人いたチームのリーダーだった。
2012年に入社し、ずっと米国本社で働いてきた。ツイッターは17年、英語で140文字しかできなかった投稿を280字に増やした。創業者のジャック・ドーシー氏に直談判して、このプロジェクトを主導したのがイハラさんだった。米国のテックメディアでも「高く尊敬されたシニアエンジニア」と評価された人物だ。
マスク氏に期待を込めたのには、伏線があった。
マスク氏の買収前、イハラさんは業務時間外で別のリサーチを進めていた。その頃、ツイッターのヘビーユーザーが減り、他のサービスに流れていると報じられた。ロイター通信は当時、ツイッターの月間利用者の10%未満にとどまりながら、9割のツイートを生み出す「ヘビーユーザー」が「完全な減少傾向にある」とする内部資料を報じていた。
「ツイッターがゆっくり死んでいくという兆候がいくつかあった。何か大きな変更がないと10年後にはもうないと思っていた。いいか悪いかわからないけど、大きく流れを変えるにはマスクさんは最適だと思った」
まるで「イカゲーム」のような理不尽さ
買収後の22年11月半ば、マスク氏は「ハードコア(熱烈)になる必要がある」「長時間猛烈に働く」よう求め、賛同できなければ辞めるよう促すメールを社員に送った。
「ついていってやろうじゃん」
イハラさんは迷わず「イエス」を選んで回答した。
ある朝、マスク氏から従業員あてにこんなメールが届いていた。
「今日午後2時に会社に来るように」
「事前に過去何カ月の間に書いたコードのサマリーと、作ったコードの変更履歴をメールで送るように」
イハラさんもコードを送り、会社に向かった。だが、いくら待っても、マスク氏は現れなかった。
人員削減を乗り切ったイハラさんにも、ついにその波が押し寄せた。
感謝祭前の11月下旬、同僚とメッセンジャーアプリのプライベートグループでやりとりをしていた時、同僚が「解雇通知が来た」と騒ぎ出した。そのうち自分も会社のパソコンやメールが見られなくなり、解雇されたのを知った。
「仕事はちゃんとやっていたのに、ゲームをやっていていきなりゲームオーバーになった感じ。ルールを知らされていない(韓国のドラマ)『イカゲーム』のようだった」
イハラさんによると、重要なインフラを支えるエンジニアが全員いなくなった部署もあったという。
「サイズダウンして体制が整うのと、既存のシステムにガタが来るのとどっちが先か。数カ月で見えてくる」
ツイッターが生き残れる確率を聞くと、「五分五分ぐらい」と答えた。

