「その背景には、人手不足があると考えています。最近は新卒の初任給引き上げや、一般社員の賃上げの動きも高まっています」(同)

物価上昇や人手不足の影響で、賃金は上昇している。その結果、1人あたりのコストも大きく増えており、企業は人件費への意識をこれまで以上に強めている。

「さらに、人手不足の中では、退職しても次の仕事を見つけやすい状況です。不況のときに比べて転職しやすいため、企業が早期退職を勧めやすいという面もあると思います」(同)

中高年を対象にした募集も増えており、三菱ケミカルグループでは50歳以上の1273人、明治HDでは50歳以上の44人が応募した。製造業では競争力強化が急務となっており、各社が事業改革を進めている。

「全体の46社のうち、39社が製造業で、8割以上を占めています。製造業には、年齢構成に偏りがあるという課題があります。中高年層が多く、管理職のポストも埋まりがちです。こうした構造的な問題を抱える企業が多い。さらに、電機メーカーなどは海外企業との競争も激しくなっています。事業再編を進める中で、人員の年齢構成を適正化しようとする動きが出てきていると考えられます」(同)

「黒字リストラ」という言葉だけ聞くと前向きな取り組みにも思えるが、対象者にとって厳しい面もある。

「希望退職に応じても、同じ収入を維持したまま転職するのは簡単ではありません。ただ最近は、早期リタイアを志向する人もおり、『良い機会だ』と前向きに受け止める人も一定数いると思います。例えば三菱ケミカルグループでは50歳以上の管理職などを対象に1273人の募集を実施しました。こうした点から、上の世代を整理する流れとも言えますし、人によっては早期リタイアと捉えるケースもあります。また、黒字リストラを行う企業はプライム上場企業が多く、退職金の上乗せも比較的手厚いのです」(同)

AI導入に伴う配置転換

一方、東京商工リサーチが4月に実施した別の調査では、大企業の59.1%が生成AIを組織的に活用していることが判明した。今後は、事務職や管理職を中心に、「AIの導入を理由にした人員整理」が広がる可能性も指摘されている。

「リストラはもともとネガティブなイメージがあります。最近は『ネクストキャリア支援制度』など、前向きな名称を使う企業も増えています。そうした流れの中で、AIの導入を理由に人員整理を進めやすくなっている面もあると思います。企業としても前向きな側面を強調しながら募集を行っており、『AI導入に伴う配置転換』などと説明しやすくなっています。みずほフィナンシャルグループは、AI導入によって事務職員を今後10年間で最大5000人減らすことを見据え、大規模な配置転換を進めるとしていますが、実際にどこまで配置転換だけで対応できるのかは気になるところです」(同)

今後も製造業を中心に、ほかの業種でも、事業の見直しや人員構成の調整による早期・希望退職の募集が広がっていきそうだ。

(AERA編集部・古寺雄大)

当記事は「AERA DIGITAL」からの転載記事です。AERA DIGITALは『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
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