優しいけれど安請け合いしない

では、どうすれば「自己犠牲型のいい人」から抜け出せるのでしょうか。

ここで参考になるのが、ペンシルベニア大学ウォートン校のアダム・グラント教授が提唱した「ギバー」の考え方です。

ギバーとは、人に与える人のことです。

ただし、ギバーには大きく分けて2種類あります。

ひとつは、自己犠牲型のギバーです。

誰にでも、いつでも、無制限に与えてしまう人です。

このタイプは、一見すると周囲から好かれます。

しかし、頼まれごとを断れず、自分の成果や健康を犠牲にしやすくなります。

結果として、燃え尽きたり、利用されたりしやすくなるのです。

もうひとつは、戦略的ギバーです。

これは、自分の時間、成果、健康を守りながら、相手やチームにとって本当に意味のある形で貢献する人です。

戦略的ギバーは、冷たい人ではありません。

むしろ、優しさを長く続けるために、境界線を持っている人です。

すべての依頼に応じるのではなく、

「今、自分が引き受けるべきことか」
「相手の成長につながる助け方か」
「自分の重要な仕事を犠牲にしていないか」

を考えてから動きます。

優しいけれど、安請け合いはしない。

親切だけれど、利用されるままにはならない。

これが、成果を出す人の共通点です。

自己犠牲型から抜け出す3つの方法

では、今日から何を変えればよいのでしょうか。

いきなり強く断る必要はありません。

まずは、次の3つから始めてみてください。

1.「これは誰の問題か?」を分ける

頼まれごとをされたとき、まず考えたいのは、

「これは本当に自分が引き受けるべき問題か」

ということです。

相手が困っているからといって、すべてを自分が解決する必要はありません。

相手の締め切り管理は、相手の問題。

相手の不機嫌は、相手の問題。

相手が準備不足だったことも、基本的には相手の問題です。

もちろん、チームとして助けるべき場面はあります。

しかし、「助ける」と「肩代わりする」は違います。

まずは、自分の責任と相手の責任を分ける。

それだけで、心の消耗は大きく減っていきます。

2.小さく「NO」を出す練習をする

断るのが苦手な人は、いきなり「できません」と言う必要はありません。

まずは、即答しないことから始めればいいのです。

たとえば、こう言ってみます。

「今の作業を確認してから、お返事します」
「今日は難しいのですが、明日なら対応できます」
「今すぐは難しいので、優先順位を確認させてください」
「どこまで必要か、先に確認してもいいですか」

これは、相手を拒絶しているのではありません。

自分の時間を守るための確認です。

アジアのビジネス人々のミーティング
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

大切なのは、頼まれた瞬間に反射的に引き受けないことです。

「はい」と言う前に、一呼吸置く。

それだけで、他人に時間を奪われる働き方から少しずつ抜け出せます。

3.無理のない範囲で、戦略的に貢献する

人を助けること自体は、悪いことではありません。

むしろ、職場で信頼を築くうえで重要です。

ただし、助け方には工夫が必要です。

大切なのは、「いつ」「誰に」「どれくらい」貢献するかを決めることです。すべての人に、いつでも、同じだけ応えようとすると、自分の仕事も心もすり減ってしまいます。

すべてを代わりにやってあげるのではなく、相手が次から自分でできるように助ける。

毎回すぐ対応するのではなく、時間を決めて対応する。

自分の重要な仕事を犠牲にしない範囲で協力する。

たとえば、依存的な部下に対して、毎回細かく手を貸すのではなく、週に一度の進捗確認にする。

同僚からの相談も、その場で全部受けるのではなく、「15時以降なら時間が取れます」と伝える。

これは冷たい対応ではありません。

むしろ、相手の自立と自分の成果を両方守る対応です。