「いい人」はなぜ収入面で損をしやすいのか
米ノートルダム大学のティモシー・ジャッジ教授らは、性格特性のひとつである「調和性」と収入の関係について研究を行いました。
調和性とは、簡単に言えば、人当たりがよく、協力的で、周囲との衝突を避けようとする傾向のことです。
研究では、調和性の高い人は、低い人に比べて収入面で不利になりやすい傾向が示されました。とくに男性では、調和性が低い人のほうが、調和性の高い人よりも年収が18.31%高いという結果が報告されています。
ここで注意したいのは、「感じが悪い人になれば稼げる」という話ではないことです。
問題は、優しさそのものではありません。
必要な場面で交渉できない。
断るべき依頼を断れない。
自分の仕事の優先順位を守れない。
こうした「境界線の弱さ」が、結果として評価や収入に影響してしまうのです。
職場では、ただ感じがよいだけでは成果として評価されにくいことがあります。
むしろ、周囲に合わせすぎる人ほど、「あの人ならやってくれる」と頼まれごとが集まり、自分の成果につながる仕事に時間を使えなくなってしまいます。
つまり、「いい人」であることが問題なのではありません。
「いい人」でいるために、自分の時間と成果を差し出し続けてしまうことが問題なのです。
「いい人」が陥りやすい3つの場面
では、職場で損をしやすい「いい人」は、どのような場面で自分を消耗させているのでしょうか。
1.仕事を抱えすぎて、本来の成果が落ちる
「ついでにこれもお願いできる?」
「ちょっとだけ手伝ってもらえる?」
「あなたなら早いから、これも頼める?」
そう言われるたびに引き受けていると、自分の重要な仕事より、他人のタスクで1日が埋まっていきます。
もちろん、助け合いは大切です。
しかし、すべてを引き受けていれば、本当に評価されるべき仕事に使う時間がなくなります。
成果として見られるのは、多くの場合、「何をどれだけ生み出したか」です。
どれだけ人に親切にしたかは、必ずしも査定表に載るわけではありません。
2.断れないことで、時間と集中力が崩れる
「5分だけいい?」と声をかけられ、断れずに応じる。
すると、気づけば30分経っていることがあります。
しかも失われるのは、その30分だけではありません。
いったん集中が途切れると、元の思考の深さに戻るまでに時間がかかります。
資料を読み込んでいた。
企画を考えていた。
文章を書いていた。
数字を分析していた。
こうした仕事は、細切れの時間では深まりにくいものです。
「5分だけ」の安請け合いは、実際には、集中力の流れそのものを断ち切っていることがあります。
3.評価に乗らない「見えない仕事」だけが増える
頼まれごとを引き受けると、「助かった」「ありがとう」と言われます。
その瞬間は、たしかにうれしいものです。
しかし、その仕事は本当に評価につながっているでしょうか。
会議室の準備。
誰かの資料の微調整。
急な確認作業。
ちょっとした連絡調整。
本来の担当ではない雑務。
こうした仕事は、職場を回すうえでは必要です。
しかし、何度も引き受けているうちに、「あの人がやってくれるもの」と見なされてしまうことがあります。
感謝はされます。
でも、昇進や給与にはつながらない。
これが、「いい人」が損をしやすい大きな理由です。

