独自の工作機械を作るしかなかった

中国工作機械産業の「黄金の10年」も終わりに差し掛かった、2012年のある夜のこと。ドイツのホテルの屋上に一人の男が立っていた。SMTCLの関氏である。

SMTCLは2007年、総額11億5000万元(約268億9000万円)を投じ、スマート数値制御システム「i5」の自主開発に着手した。だが成果は一向に出ない。チャイナ・デイリーの取材に対し、関氏は当時をこう振り返る。

「『赤字垂れ流しの国有資産』というレッテルが首にかかった石臼のようだった。結果を偽りたいという誘惑すらあった。誰にも分かってもらえない苦しみだった」

開発投資はかさみ、成果は出ず、理解者もいない。関氏はあの夜、ドイツのホテルの屋上で何時間も立ち尽くした。のちに取材を受けた彼は、「もう少しで飛び降りるところだった」と明かしている。

屋上のへりに立っている男性の足元
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それでもi5は2012年末に完成する。シーメンスとファナックが独占してきた工作機械のモーション制御に、風穴が開いた。数値制御工作機械に初めて搭載された「中国製の頭脳」である。

今日、瀋陽市に広がる瀋陽機床の75万平方メートル(東京ドーム約16個分)の工業団地から、独自の知能数値制御システムi5を載せたスマート工作機械が中国各地へ送り出されている。

急拡大したメーカーの転落

SMTCLの関氏が屋上で思い留まった夜から数年後、もう一人の経営者はまったく異なる道を選んだ。不正に手を染めたのだ。

2018年5月、中国公安省は大連機床集団の陳永開会長に対し、融資詐欺の容疑で逮捕状を発付した。当時56歳の陳氏は、全国指名手配となる。中国の英字経済メディアの財新グローバルが地元警察関係者への取材を基に報じている。

大連機床は中国東北部・遼寧省を拠点とする工作機械大手で、「工作機械を車のように(大量生産で)作る」を掲げて急拡大した企業だった。

発端は2016年にさかのぼる。大連機床は同年9〜11月、中江国際信託が組成した信託商品(企業向け融資商品の一種)を通じ、6億元(約140億円)を調達した。担保に差し入れたのは約7億6000万元(約177億円)の売掛金である。

ところが同年12月、大連機床は社債のデフォルト(債務不履行)を起こす。中江側が調べると、売掛の事実がそもそも存在せず、その証拠となった書類も偽造だった。2017年初め、中江側は江西省の裁判所に提訴。警察が捜査を引き継ぐ。

大連機床はその後もデフォルトを重ね、破産手続きに追い込まれた。2018年4月28日時点で100社を超える債権者が総額224億元(約5240億円)の債権を主張している。