壊滅した中国製の工作機械「四大天王」
詐欺で瓦解した大連機床に比べれば、SMTCLは危機をうまく切り抜けたかに見えた。だが、勢いを失う中国工作機械業界の例に漏れず、同社も斜陽化の一途を辿る。
2011年に売上高で世界最大を誇った国有工作機械メーカーのSMTCLだったが、2019年、ついに破産再建に追い込まれた。財新グローバルによると、中央直轄の国有企業・中国通用技術集団が再建に手を貸している。同年11月、同集団による再建計画が債権者と裁判所の双方から承認された。
同計画のもと、中国通用技術集団はSMTCLに25億元(約585億円)、上場子会社の瀋陽機床股份に18億元(約421億円)を投じる。それぞれ株式の57%と約30%を取得する形だ。
瀋陽機床だけでなく、工作機械業界で「四大天王」と称された主要企業群が総崩れとなった。36Krによると、業界1位の瀋陽機床と2位の大連機床が相次いで破産再建に入り、3位の秦川機床も多額の損失を抱えた。傷は業界全体に広がる。2020年上半期、一定規模以上の企業のうち、赤字企業の割合は24.1%。およそ4社に1社が赤字という状況だ。
いまなお、業界は血を流し続けている。フィナンシャル・タイムズによると、2024年の中国工作機械業界全体の売上高は前年比5.2%減の1兆元(約23兆円)。利益は76.6%急減し、わずか265億元(約6200億円)まで沈んだ。国内の過当競争により、利益が食い潰された影響が大きい。
日本の高すぎる壁を越えられなかった
工作機械の技術で海外製が優れることは、中国企業の従業員の間でさえよく知られている。
フィナンシャル・タイムズの取材に応じたある中国工作機械メーカーの従業員は、匿名を条件にこう認めた。自社の機械に載せるCNCコントローラーには、ドイツのシーメンスか山梨のファナックを選ぶ、と。
「両社はいまもブランド力で勝っている」と語るこの人物の証言通り、外国製の工作機械が性能で秀でる。
高精度CNC工作機械の中国での国産化について、香港系証券会社CLSAのリサーチ部門の産業アナリスト、シャオ・フェン氏は、「おそらく中国の製造業にとって、最後の難題だ」と語る。大量の資金を注ぎ込んで技術を写し取ろうとした時代を経て、なおも越えられない壁として立ちはだかる。
36Krは、国内の製造業者は割高でも外国製を好み続けており、この根深い体質の下で中国メーカーは長年にわたり技術革新を阻まれてきたと論じる。
中国政府は今、別の方角に目を向けつつある。CLSAの日本リサーチ責任者、モルテン・ポールセン氏は、「政府は工作機械に目を向けることをやめ、ロボットに注力し始めたようだ」と指摘。「そのままでは、産業として十分な採算が取れなかった」とも語っている。
中国のロボット技術の発展には、たしかに目を見張るものがある。AI技術と組み合わさることで、今後の発展次第では工業用途だけでなく、日常のアシスタントとしてもシェアを広げていくだろう。
一方で現実問題として、ロボットを高精度に加工する上でも、サブミクロン精度の5軸CNC工作機械が欠かせない。その頭脳である数値制御装置の世界市場は、今も日本のファナックとドイツのシーメンスが支配している。
高精度の「母なる機械」を国内で製造しようと、数十年挑み続けてきた中国。ついには壁を越えることなく、いまその目標を静かに取り下げつつある。


