妻のイベント参加が出世に影響
余暇の地域生活でも、企業ぐるみの企画へと参加しなければならなかった。
これも企業共同体の一体感を強めることが目的である。その際、妻たちが積極的に動員された。しかもそうした企業の地域イベントへの参加は、なんと夫の査定の対象となる。
「妻がハイキングに参加するかどうか」が出世に影響した。同じく『妻たちの企業戦争』では、そうした様子が次のように描写されている。
社宅団地祭り、独身寮祭り、職場ごとに家族ぐるみのレクリエーション。気候のいいときには、社宅の運動会、工場の運動会、全社の運動会。そこに子供の運動会も加わるから、休みのたびに運動会があるような忙しさである。主婦は弁当作りや運動着の洗濯に追いまくられ、休日の朝どしゃぶりの雨が降っていたら、思わずバンザイと叫んでしまうという。シーズンが終わるころ、借り物競争で帽子を借りて走ったのはどこだったか、綱引きをしたのはどのクミだったか、記憶があいまいになってくるほどである。
「半強制的な行事が多いこというたら、もうめちゃめちゃですわ」
(『妻たちの企業戦争』134~135頁)
「半強制的な行事が多いこというたら、もうめちゃめちゃですわ」
(『妻たちの企業戦争』134~135頁)
人事部が「夫の代理パパ」を用意
こうして男性の余暇・地域の人間関係も企業関係者ばかりになっていくのだが、そもそも妻たちは男性の会社の都合で、全国転勤で住む場所も変わる。そうすると、地元には知り合いがおらず、休日も好きなことができるわけではない。ますます夫のケアと会社が用意するイベントだけが生活のすべてになっていく。
極めつきは、海外単身赴任のために、人事部が「代理パパ」を用意し、運動会など学校行事に父親に代わって参加するということもあったほどだ。
「〔…〕例えば、こどもの進学や住宅の新・増築、あるいは生命保険の手続きや財産の管理、夫人の就職など、相談を持ちこまれれば親身になって考え、その善後策にとびまわる。引っ越し、大掃除には手伝いに行く。奥さんが病気になると、こどもを幼稚園へ送り迎えする。……新築の棟上げときけば、出向いていってモチまきもやる。冠婚葬祭にも代理で出席、要望があれば父親参観にもかけつける。要するに父親の代理をつとめるわけだが“本物”以上の活躍ぶりに海外から帰ってきた父親が比較されて困ることもあるそうだ。」
(『妻たちの企業戦争』210頁)
(『妻たちの企業戦争』210頁)

