以上のように、インテルを取り巻く状況は、存続すら危ぶまれていた1年前からは想像もできないほどに好転している。
同社の市場評価の劇的な高まりが、「AIの推論シフトに伴うCPU需要の再燃」、および「地政学リスクの高まりを受けたセカンドソース需要の拡大と半導体製造の米国回帰の機運」など、外部の環境変化に恵まれた結果であることは間違いない。
しかし、技術革新が著しく、絶えず環境が変化し続ける半導体業界において、自社の強みを活かせる潮流を逃さず掴むのが何よりも重要であるということは、AIの学習フェーズにおけるエヌビディア、そして過去のPC時代におけるインテル自身が証明してきたとおりだ。
再起を図るかつての王者に日本企業が学ぶこと
加えて、潮流を掴んだ背景には、最先端プロセスや先端パッケージなど、強みとなり得る技術への継続的な投資と研鑽に加え、米政府の出資受け入れにみられるような自らの地政学的ポジションの最大活用、そして「先端パッケージ工程のみの受託検討」に象徴される現CEO体制下での企業文化の柔軟な変革など、インテル自身の努力があったことも忘れてはならない。
こうしたインテルの姿は、グローバル市場での復権を模索する日本の半導体産業にとっても重要な示唆となる。
折しも、足元のAI市場では、サイバー空間でのデータ処理から、自動運転やロボティクス、スマート工場といった現実世界で稼働する「フィジカルAI(エッジAI)」のフェーズへの移行が進み始めるとともに、爆発的な増加を続ける電力消費の抑制が最重要課題となっている。
これらの分野は、イメージセンサーなどの「知覚デバイス」、電力効率化に寄与する「パワー半導体」や「先端パッケージ素材」、そして長年積み上げてきた「製造業・ロボティクス基盤」など、日本の強みを存分に活かせる領域である。
インテルが時流の変化を巧みに捉えて復権への道筋を描いたように、日本企業にも、自らの強みを最大限に活かし、目前に迫る好機を逃さぬための大胆な技術投資や戦略的な立ち回りが求められているといえよう。


