もちろん、14Aが本当に安定量産を実現できるかは未知数であり、そもそもTerafab自体も実現には相当高いハードルが見込まれる案件ではある。しかし、初期投資だけで550億ドル、総投資額は1190億ドルに及ぶといわれる超巨大プロジェクトの主要パートナーに選ばれたことは、インテルにとって、単なる「巨額の売上獲得」だけに留まらない意味を持つ。
実現すれば、大規模量産を通じた最先端プロセスの早期習熟や、さらなる顧客獲得に必要な実績の確立など、同社のファウンドリ事業の飛躍に直結しうるものであり、まさに最大の好機を得たといってよいだろう。
巨大テック各社が「前払い」してでも欲しがる技術
要因その③ 先端パッケージ領域における勝機
三つ目は、前工程のみならず、先端パッケージ領域においてもインテルに勝機が生まれていることだ。
AI半導体の性能向上には、前工程における微細化だけでなく、複数のチップを一つのパッケージ内に統合して高性能な半導体を作る「先端パッケージ」の技術が欠かせない。一方で現在、世界の先端パッケージ市場はほぼTSMCの「CoWoS」技術が独占している状態にあるが、エヌビディア1社だけで全体キャパシティの6割超を占めるなど、市場の需要に供給がまったく追いついていないのが実情だ。
さらに、CoWoSの製造拠点は、TSMCが海外進出を果たした現在も依然として台湾内に集中しており、地政学的リスクの観点からも「セカンドソース(第2の供給源)」を求める声は多かった。
そのため足元では、GoogleやAmazonといった巨大テック企業が、自社開発のカスタムAI半導体の製造において、インテルの先端パッケージ技術「EMIB」の採用を本格的に検討しているという。ジンスナーCFOは3月時点で、「一部顧客から(キャパシティ確保を目的とした)前払いを受け入れるための準備を整えている」と述べており、別の関係者によれば、受注額は全体で数十億ドルに達する見込みだという。
ニーズに合わせたビジネスモデルの転換もいとわず
「前工程は他社に任せ、先端パッケージ工程だけを受託する」というのはこれまでのインテルにはなかったビジネスであり、関係者曰く「大きな発想の転換」だが、裏を返せば、それだけインテルの先端パッケージに対する市場の期待や引き合いが強いことの表れでもある。
ジンスナーCFOによれば、先端パッケージ事業の粗利率は約40%と、他の自社製品と遜色ない水準にあるという。18Aなどの前工程部分が安定した収益を上げられるまでにはまだまだ時間を要すると見込まれるなか、先端パッケージ事業はインテルがAI特需の恩恵を享受するための最短領域、かつファウンドリ事業再建の柱として、非常に重要な位置付けにあるといえよう。

