お互いの“普通”がまるで違っていた
とても費用分担はできないことを伝えると、「大手の上場企業で働いてるんでしょ? 給料高いんじゃないの?」と平然とした表情で言われてしまった。
このままでは埒が明かないと、彼女は自分の源泉徴収票を彼に見せた。彼女の年収は、税込み500万円ほどである。彼は冷ややかに源泉徴収票を眺め、「仕方ないね。生活費は8対2の負担割合にしよう」と言ったのだ。
彼女の生活費の負担は、全体の2割になったとはいえ、今までの彼女の生活費より高かった。何しろ、彼が考える生活レベルがとても高いからである。
彼女は彼に言った。「家事は一切私がやるから、会社を辞めて専業主婦になってもいい?」
すると彼は、「僕は夫婦二人がそれぞれ社会と関わりを持って、自立している夫婦関係が理想なんだよね」と、当然のように言う。
彼が目指すのは、いわゆるパワーカップル。二人がバリバリと働いて、高い世帯年収を稼ぎ出し、いつかは都心に夫婦名義のタワマンを購入したい。
それに対して、彼女が理想とした夫婦生活は、贅沢三昧を望むものではなく、ただ、温かい家庭が欲しい。二人で子供ができるまでは協力し合い家事を分担しながら働く。そしてできるだけ早く、子供を産み育てていくごくごく普通の家庭を持ちたい、というものだった。
夫の生活は独身時代と一切変わらなかった
波乱含みながら二人の新生活はスタートした。
彼は、一人暮らしが長い分、確かに家事について、彼女の手を煩わせることはなかった。
洗濯は、彼の一人分のものを溜めることなくする。彼女の洗濯物が洗濯籠にあったとしても、それは無視して、自分の分だけを洗濯機に入れる。食事は、平日はほとんど仕事関係の会食があり、夕飯時は不在。たまに自宅に帰ってくるときは、自分が好きなものをデパ地下の総菜を購入してくる。それも彼の分だけである。
とある夜のこと、まだ夕飯を済ませていない彼女が、彼が買ってきたデパ地下総菜を一緒に食べることになった。
当然彼は、嫌な顔をすることなく分け与えてくれたはいいが、約5000円だったというその費用を、二人の財布に計上した。
また彼には、自分の体型をキープするため、自身に課した掟がある。
自分が決めたルーティーンの生活リズムを一切崩さず、朝起きたら近所を数キロのマラソン後、自宅に戻りリビングで筋トレとストレッチ。朝食はプロテインドリンクのみで、仕事に行く。そして、週のうち最低3日は会食で帰宅は24時を超える。
週末の土日のどちらかは、ゴルフ。毎月第一金曜日は、同期の飲み会、奇数月の第3金曜日は元の職場の仲間との飲み会ほか、彼の付き合いの飲み会は、独身時代と一切変わらない。

