【③利行(りぎょう)】
利行とは「他者の利益のために尽くすこと」です。しかも、見返りを求めず、相手の立場や境遇に関わらず行うことが大切です。たとえば、自分の評価や利益に直結しなくても、部下が困っていたら時間を割いて相談に乗る。契約や売上に結びつかなくても、顧客のためになる情報や解決策を提供する。
自分の担当外でも、チーム全体のためになるなら手を差し伸べる。「この人は自分にとってメリットがあるから親切にしておこう」と考えるのではなく、立場や貧富に関係なく人のために尽くす。その積み重ねが「厚い信頼」という最大のリターンになります。
【④同事(どうじ)】
同事とは「相手と同じ心・境遇に立つこと」です。相手の喜びを自分の喜びとし、悲しみを自分の悲しみとする。相手を尊重し、立場を理解した上でともに歩むことです。
リーダーはときに諭す立場にもなりますが、一方的に押しつけたり、怒鳴りつけたりしてはいけません。相手の状況をきちんと認めることが前提です。リーダーが上から命令するのではなく、ともに歩む姿勢を示すことで、部下は安心してついていけます。
見返りを求めてはならない
四摂法は、「人を動かす原理原則」であり、時代や立場を超えて人々から尊敬を集める人の共通点です。与えることを惜しまない人、思いやりのある言葉をかける人、見返りを求めず尽くす人、相手とともに歩む人。時間や労力を与えているため、短期的には「損をしている」と映るかもしれません。
見返りを求めない行動は、ときに「非効率」や「甘い」と評されることもあります。しかし長い目で見れば、そうした姿勢が確かな信頼を呼び込み、最終的には大きな成果へとつながっていくのです。
ビジネスの現場では、成果主義やスピード競争が強調されがちですが、長期的に人と組織を動かすのは数字や権威ではありません。人々が「この人にならついていきたい」と心から思えるかどうかです。
信頼は一朝一夕には築けません。けれど、布施・愛語・利行・同事を日常の中で少しずつ実践していけば、やがて揺るぎない信頼へとつながっていきます。リーダーが本当に手にすべきは、肩書きや報酬ではなく「信頼関係」です。四摂法はその道筋を示す教えであり、仏教に根ざしながら、ビジネスに通じるリーダーシップの原理です。

