高齢者の珍回答「ご長寿早押しクイズ」

しかし問題をただ簡単にするだけでは、解答者たちはすぐに答えを導き出してしまいますし、視聴者としても興ざめです。そこで要請されたのが、おバカタレントという装置でした。

彼らの登場によって、見当外れの誤答がエンタテインメントとして笑いを呼び起こすと同時に、むかしのクイズ番組よりもずっと簡単で、しかし家族で共有するのにちょうどよい水準の「常識」問題を出題することが可能になりました。

「ヘキサゴンII」が流れるリビングルームでは、タレントたちが苦戦する問題に対して親よりもこどもが先に正しい答えを出したり、親がこどもに正解を教えたり、といった光景が見られたはずです。

つまり、おバカタレントを媒介にすることで難易度の調整が可能になり、戦後にクイズ番組が導入された当初の機能が回復したのです。

似たアプローチが成功した例に、「さんまのSUPERからくりTV」(TBS系列、1992年~2014年)内のコーナー「ご長寿早押しクイズ」があります。

おバカタレントが誤答を繰り返す理由が知識不足だったとすれば、高齢者が誤答をする理由は「記憶力の低下」や「認知機能の低下」ですから、それをどこまでエンタテインメントとして笑ってよいのかは本来微妙なところです。

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写真=iStock.com/yuyanga
※写真はイメージです

「おバカ解答」を指示するカンペがあった

ただ、このコーナーでは、予測もつかない珍解答から、解答対象についてのほとんど悪口といえるような間違い方まで、すべてを「ご長寿」というめでたい事象で包み込むことで、強引に成立させてみせました。

初めて放送されたのは1994年11月で、2016年以降は毎年年末、特番「明石家さんまの爆笑!ご長寿グランプリ」の目玉企画として放送が続いています。

ただ、「ヘキサゴンII」について言えば、当時のおバカタレントには一定の演出があったことが明かされています。

人気タレントのひとりだったスザンヌはのち、自分にわかるような問題であっても、「おバカ解答」を指示するカンペが出されていたと振り返っています。

たとえば「石の上にも○年」という問題に対し、「3年」という答えがわかっていながら、「120年!」と答えていたそうです。

こういった直接的な指示がなくても、制作側の期待を察知し、あえて「おバカ」を演じた出演者もいたと考えるのが妥当でしょう。おバカタレントという秀逸な装置は、こういった作為をもとに機能していました。