断熱性能が義務化されたのはつい5年前

夏場も同様です。

冷房が設置されていても、教室温度が35.1度に達した事例が報告されています。

見落とされがちなのが、鉄筋コンクリート造特有の「輻射(放射)熱」の影響です。

コンクリートは熱容量が大きく、日射や外気により、コンクリート躯体そのものが熱を蓄えます。夏場には熱くなったコンクリートが室内側へ輻射熱を放射し、冬場には冷え切った壁や床が、冷輻射によりひとの体温を奪います。

人は空気の温度だけで快・不快を感じているわけではありません。体感温度には、壁や床、天井など周囲の表面温度から受ける輻射の影響がとても大きいのです。

たとえば、室温が20度あっても、床や壁が極端に冷えていれば体感温度は大きく下がります。

床の表面温度が2度の教室は、たとえ室温が十分に上がっても、床から体温が奪い続けられているのです。

例えば下の写真は、夏の都内の最上階にある小学校の画像です。

夏の都内の教室内の温度
竹内昌義、内山章、前真之『断熱学校』(鹿島出版会)より

天井付近の2台のエアコンから15℃程度の冷気が出ていますが、天井付近は32℃に達しています。天井や壁・窓が高温になっており、エアコンが稼働中であるにもかかわらず、輻射熱で教室内がとても暑くなっていることがわかります。

また、下の写真も都内の冬の小学校の画像です。

冬の教室内の温度分布
竹内昌義、内山章、前真之『断熱学校』(鹿島出版会)より

エアコン(暖房)が稼働していますが、暖気は上方に集まり足元が寒いことがわかります。窓は低断熱なアルミサッシ・単板ガラス、壁も無断熱のコンクリートのため表面温度は10℃台で、冷輻射が生じています。

体育館ともなると、下の写真のようにその状況はさらに深刻になります。

問題なのは、最近まで断熱設計が制度上、義務ではなかった点です。

体育館内の温度分布
竹内昌義、内山章、前真之『断熱学校』(鹿島出版会)より

文部科学省の学校環境衛生基準は室温の目安を示していましたが、断熱性能そのものは義務化していませんでした。

建築物省エネ法で300㎡以上の非住宅建築物に対して断熱が義務化されたのは、2021年4月、つい最近のことです。それ以前に建てられた学校などの公共建築物には、断熱を施す義務は存在していませんでした。