カラフルな刺繍で皆の才能が開花
おばあちゃんたちの技術をベースに、スタイリッシュなデザインを使ったさまざまなアイテムをつくり、発信し、販売につなげるプロジェクトがアヴォのプロジェクト。活動の発端を、ファウンダーの一人であり、デザイナーのスザナに聞いた。
「小さいころ、両親は共働きだったからおばあちゃんに育てられました。おばあちゃんは刺繍をいつもしていて、私もそういったクリエイティビティが好きでした。学校ではデザインを選び、1年間ミラノにも留学しました。
最初はデザインに感動しましたが、表面的なものだけに思えてきました。モノにデザインを施して、もっとおしゃれに、もっと高く売れるようにするものでした。私はもっと社会のために、QOL(Quality of Life)を高めるために働きたかった。
ポルトガルに戻り、福祉施設でボランティアを始めました。そこで目にしたのは、おばあちゃんたちが伝統的な刺繍する姿でした。私はおばあちゃんたちに、もっと斬新で、もっとカラフルな刺繍をすることを勧めてみました。すると彼女たちの才能は一気に開花しました」
欧州各国で名のしれたプロジェクトに
アヴォのスタジオでは、いつもおばあちゃんたちが自由に笑い、自由に手を動かし、自由に作品のアイデアを語り合う。「これよりもっと派手にしたらいいわ」「この色は私が若いころに好きだった色よ」。その会話のどれもが、歳を重ねた人特有の余白とユーモアに満ちている。
そして驚くべきは、彼女たちの作品が、ただ「かわいい」「面白い」だけではないということだ。そこには、ポルトガルの歴史、女性の生き方、移民や多文化の影響など、複雑な要素が織り込まれている。
アヴォの刺繍は、単なる技術ではなく、人生そのものが布の上に立ち上がるような厚みを持っている。それが世界中のデザイナーや企業の目に留まり、コラボレーションへと広がっている。
古きよき伝統と、洗練されたデザインの融合。プロジェクトには注目が集まり、有名ブランドから刺繍の依頼が入ったりもするようにもなっている。ポルトガルだけでなく、欧州各国で名のしれたプロジェクトになっているのだ。
だが、本当に心を動かすのは、作品そのものではなく、おばあちゃんたちの表情だ。アヴォに参加する前は、孤独を抱えていた人もいる。家族が遠くに住む人、配偶者を亡くした人、社会との接点を失いかけていた人も少なくない。

