わが分身「三奉行」がブランドを裁く

ホンダ代表取締役社長 
伊東孝紳氏

「ホンダは2008年のリーマン・ショックで救われた」。逆ではないかと思われるでしょうが、これが翌年に社長に就任した私の率直な実感です。業績は打撃を受けました。ホンダの全世界の四輪車生産台数は07年の360万台が08年には330万台へ激減。工場も稼働停止に追い込まれました。

ただ、落ち込みの激しい日本や欧米先進国とは対照的に、アジアを中心に新興国では伸び続けました。経済成長を背景に豊かさを求める人々の自我や欲求が目覚めつつある。世界はリーマン・ショックを境に先進国主導型から新興国自立型へと構造が変化した。われわれはどう思考を転換すればいいのか。議論するなかで既存の発展パターンへの反省を迫られました。