日本の住宅性能が低い根本原因

「性能を問わない制度を、長年選び続けてきた」のは誰なのか。

もちろん、制度をつくる国側の問題は大いにあります。

これまでお話してきた通り、日本では最低基準自体が緩く、しかも気密性能のように基準自体が存在しない分野もあります。

さらに、諸外国に比べてかなり低い断熱性能のマンションが、ZEH-Mという国のお墨付きを得て、高性能マンションとして売られているという現状もあります。

しかし、長年、住宅にかかわる仕事をしてきて感じるのが、消費者側の問題です。

住宅を購入する際、多くの人は立地、間取り、価格、デザイン、ブランドを重視します。さらに、日本の分譲マンション市場では、外観や共用部の豪華さが差別化要素になりやすく、躯体性能や断熱性能は“裏側”に追いやられがちです。

結果、住宅販売の現場でも、設備仕様の話に終始し、窓のU値や気密性能の測定値が前面に出ることはほとんどありません。

もちろん、性能が法律で担保されていれば、消費者が個別に調べる必要はありません。

ただ、法律が不十分な現状では、性能へのこだわりは市場に左右されます。国際的にみて十分な高気密・高断熱住宅に対するニーズが顕在化しない限りは、マンションディベロッパーが性能を引き上げることはないと思われます。

技術ではなく、住宅のマーケット構造の問題だった

今回、岡田さんのお話から見えてきたのは、日本が「遅れている」という単純な構図ではありません。

日本には高性能サッシもありますし、高断熱・高気密住宅をつくる技術もあります。実際、戸建住宅については、一部の工務店・ハウスメーカーは世界水準の性能を実現しています。

しかし、それは、住宅業界の標準ではなく、特にRC造のマンションの取り組みは圧倒的に遅れているのです。

北米では、多くの地域で「最低でもここまでは確保する」という基準を法制度として明確に定めています。一方、日本では、市場に委ねる形で性能が決まる構造が続いてきました。

一方で、消費者の多くは住宅性能に頓着していません。

この法制度と市場構造の違いが、寒さ、光熱費、結露、そして長期的な建物の劣化にまで影響を及ぼしています。

家が寒いのは気候のせいではありません。高い光熱費も、エネルギー価格だけの問題ではありません。

私たちは、どのような住宅性能を“当たり前”とする社会を選ぶのか。

それは消費者側の意識が問われています。

岡田早代(おかだ・さよ)
マサチューセッツ州認定設計士、 ウェントワース工科大学大学院客員教授
2004年よりマサチューセッツ州で学校・保育園等の公共建築物の新築・改修、低所得者層の集合住宅の設計に従事。環境コンサルタントとしても活動している。
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