熱が逃げていく日本の窓
国が制度を定める日本とは異なり、米国では、州や自治体ごとに建物の省エネ性能に対する基準や規制は異なります。
例えばニューヨーク市では、住宅の窓に明確な断熱性能の最低基準が設けられています。
その一つが「U値」です。
U値(熱貫流率[W/(㎡・K)])とは、窓を通してどれだけ熱が出入りするかを示す指標で、数値が小さいほど断熱性能が高くなります。たとえば、U値2.5の窓は、U値1.25の窓と比べると、同じ面積で約2倍の熱が逃げることを意味します。冬であれば暖房の熱が流出し、夏は外の熱がそれだけ外に流入してきます。
ニューヨーク市の集合住宅の場合、窓のU値はおおむね1.1〜1.8W/㎡K以下が求められます。
一方、日本の鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造の分譲マンションで一般的に採用されている「ビル用サッシ」の多くは、U値2.5〜3.5W/㎡K程度にとどまっています。
2.0を下回る「ビル用」の高断熱サッシは値段が高く、市場にあまり流通していません。
つまり、日本の一般的な新築マンションの窓は、ニューヨーク市の最低基準に達していない可能性が高いのです。
“アルミサッシ”は1400倍の熱を通す
ここで誤解してはいけないのは、日本に技術がないわけではないという点です。
木造戸建住宅では、U値1.0前後の高性能な樹脂サッシがかなり一般的になってきています。
また、新築の戸建住宅ではアルミサッシはあまり採用されなくなっていますが、新築分譲マンションでは、いまだにアルミサッシが一般的です。アルミは、樹脂の約1400倍も熱を通すため、諸外国ではほとんど使われていません。
RC造の分譲マンションでは、コスト構造やマーケットニーズが顕在化していないことから、そうした高性能窓は採用されにくいのが現状です。
2025年の東京23区の新築分譲マンションの平均販売価格は約1億3600万円と過去最高を記録しています。非常に高価な住宅であるのにも関わらず、「窓の断熱性能」という観点では、北米の最低水準を大きく下回る仕様が一般的になっています。
多くの購入者は、自分のマンションの窓のU値を知らないと思います。
もちろん諸外国を比較しての相対的な性能についてもまったく知らないと思います。
そもそも、販売資料に窓のU値が明示されることもほとんどありません。
外観や設備仕様は詳しく説明される一方で、非常に高価な住宅なのに、暮らしの快適さや省エネ性能に直結する断熱性能という住宅の根幹部分は十分に可視化されていないのです。
寒さや光熱費の高さは、気候の問題ではなく、制度と市場構造の問題である可能性が高いのだと思われます。

