アリストテレスも孔子も保守を説いた
この保守主義というのは、実はかなり昔から存在してきました。例えば、哲学者のアリストテレスは、「道徳や政治は自然科学とは異なり、特別な専門家が欠如している」とし、「これらの領域においては世代を超える人間の経験が主要な知識の源である」と語っています。
つまり、道徳や政治は科学ではないので、人間の経験を重要視しましょうと言っていたのです。経験とは、知恵やトライアンドエラーの積み重ねだからです。
さらに、中国の孔子が示した政治制度の崩壊への懸念は、慎重で保守的な政治観をもたらしました。孔子の教えは権威と階層を強調することが多いのですが、これもまさに保守主義です。経験則やそれまでの仕組みをむやみに破壊するのは危険であるということです。
欧州において近代の保守主義が発展した理由は、欧州各国が実証主義であることと大きな関係があります。日本の人はあまりご存じないかもしれませんが、イギリスをはじめ、特に欧州北部は実際に行ったことや経験に大変重きを置く社会です。
学歴より実績で採用する「実証主義」
例えば、誰かを採用する際、欧州各国ではその人の実績を厳しく問います。どこの学校を出たからというだけでは簡単に採用してもらえず、目の前で何か仕事をしてみて、実際にできれば採用してあげようという考え方です。
ですから、昔は「アプレンティス」といって丁稚奉公を長くやり、それで仕事ができると証明されれば本採用になるということが少なくありませんでした。
学校に入るのにもどこかに就職するのにも、自分の実績を証明できなければダメ。さらに、その人がきちんと物事を行えると証明する承認が必要になります。
こうした「実証主義」が欧州を発展させた要因の一つでもあり、実証するということは、証明するということ、つまりは物事を再現することにつながります。これは科学の話です。
科学というのは、ただ単に思いつきを話すだけではダメで、その考え方ややり方、法則を再現できなければなりません。再現できるということは、どこでもいつでも可能であるということ、つまり普遍性があるということです。これこそが、実証主義の根本にあるものなのです。

