ナフサに関わらない製品のほうが少ない

このような危機に対して、どう対処すればよいのだろうか。直近ですでに影響が生じているのがナフサ不足であるが、ナフサが不足するなら、ナフサ由来の必需品を全て備蓄しておけばよいのではと考えたくなるが、今回の危機に「備蓄」で対処することはほとんど不可能と言ってよい。

前述の通り、ナフサが関与する製品は多い。多いどころか、ナフサに関わらない製品を探すことの方が難しいのが、現代の石油社会である。石油由来ではない製品についても、販売時には包装資材に包まれている。鍋を持参して豆腐を買う、焼き芋やたい焼きを新聞紙に包んで持ち帰る、ナフサなしで得られる物資は、つまりこのようなモノだけなのだ。

ペットボトル製品
写真=iStock.com/Itsanan Sampuntarat
ナフサに関わらない製品のほうが少ない(※写真はイメージです)

ナフサ供給が絞られると、川上に当たるナフサ分解工場(ナフサクラッカー)から順番に、中間素材、容器包装、最終製品という順番で、徐々に影響が生じる。しかし各メーカーもこのような事態に対処するためのBCPを策定し、在庫の確保や代替調達の計画などを持っているはずであるから、「生活製品の欠品」までにはタイムラグがある。

「出荷停止のお知らせ」まで分からない

一方、各企業の備えのレベルを予測することは難しい。経営の効率化を目指すためには在庫を減らすことが望ましいが、このような企業は仕入れが止まるとすぐに出荷も止まってしまうのだ。そして、どの業界が、どのメーカーが、どのような順番で止まっていくのかは、「出荷停止のお知らせ」が報じられるその時まで分からないのである。

現代のサプライチェーンは複雑化しており、「ジャスト・イン・タイム」の名の下に最適化されている。いずれかのメーカーが白旗を上げた際、次にどのメーカーに影響が広がるかは分からない。それを消費者や仕入れ側が知るのは、実際に製品がなくなってからなのだ。そしてこれがいつからいつまで継続するかも、予測することは不可能である。

発生と同時に影響の生じる大地震などの自然災害と異なり、原油危機による影響はジワジワと進行するため危機感を抱きづらい。さらに、影響の大小は人や会社により異なるため、「社会全体としての影響は軽微に見えるが、個人単位では決定的な打撃を受ける」という、極めて個人的で孤独な危機になる恐れがある。「私のナフサ危機」「わが社のナフサショック」を回避する準備が必要なのだ。