「アメーバ経営」とフィロソフィの力

最初から勝算があったわけではありません。しかし、引き受けたからには命をかけて再建を成功させなければならないとの覚悟ができました。

JAL再建に向けて妥協を許さない職務を遂行する日々が続き、仕事を終えるとコンビニでおにぎりを買ってホテルに帰り、寝る前にぱくつくという生活を送ることになりました。

私が京セラの同志2人とともにJALに持ってきたのは2つだけ。1つは「アメーバ経営」という会社の組織を10人前後で構成する小集団に分け、独立採算制を徹底させる「部門別採算制度」の仕組み。そして「フィロソフィ」。

フィロソフィとは、私の50年の経営者としての経験を基にした経営哲学で、経営者を含め全社員が同じ価値観を共有し行動するための指針です。その基本は「人間として正しいことをする」という、とてもプリミティブ(原則的)な考え方です。これをJALの幹部に繰り返し教育し理解してもらうことで、意識改革を図っていった。やがてJALの幹部たちの意識も変わり「JALフィロソフィをつくりたい」と言いだしたので、京セラの経営哲学である「京セラフィロソフィ」をベースに議論を重ね、「JALフィロソフィ」をつくったのです。

京セラやKDDIでは、フィロソフィが本当に浸透するまでに時間がかかりましたが、JALでは短期間で受け入れられました。破綻により自信を失っていた社員が素直な気持ちで学んでくれたからです。

フィロソフィの次に、企業の目的を示すため「企業理念」をつくりました。私は、京セラを創業したときから、会社は社員の物心両面の幸せを追求することが目的だと思ってきました。それは京セラの企業理念の冒頭にも掲げています。