「ネオ・ミドルパワー外交」とは何か
これを実行に移すために、首相は各国への訪問を早急に拡大すべきだ。東南アジアは、この外交的至上命題の「グラウンド・ゼロ(爆心地)」である。ISEASユソフ・イサク研究所が発表した権威ある『東南アジアの現状2025年調査』によれば、日本は依然としてこの地域で最も信頼されている主要国であり、回答者の66.8%の信任を得ている。
ただ、調査を注意深く読み解くと、この地域が日本の最大の戦略的資産であるのと同時に、最も差し迫った脆弱性も持っていることも明らかになる。地政学的な地殻変動に関する厳しい警告も含まれているのだ。
鍵は中国だ。同国はこの地域で最も影響力のある経済的・政治的・戦略的勢力であり続けているが、南シナ海における攻撃的な行動への不安(ASEANの回答者の51.6%が地政学的懸念のトップに挙げている)が主な要因となり、高いレベルの不信感(41.2%)に直面している。
さらに、欧州連合(EU、51.9%)が米国(47.2%)を抜き、2番目に信頼される勢力となったように、回答者のかなりの部分が、ワシントンの予測不可能性を理由に、この地域への米国の関与は今後変動すると予想している。
このデータは明確な構図を描き出している。
他国との信頼は生鮮食品のようなもの
ASEANは中国の侵食と米国の変動性に深く不安を抱いており、リスクをヘッジするための信頼できる、ルールを守るパートナーを積極的に探しているのだ。
しかし、信頼とは生鮮食品のようなものである。そこで、高市首相はジャカルタ、ハノイ、マニラ、シンガポールを訪問し、具体的な成果(デリバラブル)をもたらさなければならない。これは、従来のインフラ支援を超えて、この地域の最大の課題に取り組むことを意味する。
日本は、デジタル経済とグリーン経済のための枠組み、海洋状況把握(MDA)のための能力構築、そして何よりも重要な「サプライチェーンの強靭化」のための戦略を提供しなければならない。
東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)の最近の調査でも強調されているように、競争力のある国際的な生産ネットワークを構築するには、デジタル統合と規制の調和が不可欠である。
さらに、日本はミドルパワーが中国への集団的な「対抗的強制(カウンター・コースション)」能力を開発するのを支援しなければならない。以前、リトアニアが台湾に代表所の開設を認めたことで中国から厳しい経済的報復を受けた。
これは北京の圧力の治外法権的な側面を浮き彫りにした。北京は、単なる二国間貿易ではなくサプライチェーンを標的にすることで、直接的な貿易量がわずかであっても小国にダメージを与える能力があることを証明した。
高市首相は、ASEAN、EU、QUAD(日米豪印)のパートナーと協力し、EUの中国への「反強制手段(Anti-Coercion Instrument)」と同様の枠組みを構築したい。この集団的な対応は、中国からの標的が1国に絞られないようにする効果が期待できる。
同時に、高市首相は他の先進民主主義国との関係を強固にすることで、戦略的リスクヘッジを行わなければならない。
つまり、ブリュッセル、オタワ、キャンベラ、ウェリントン、ソウルを訪問することで、高市首相は日本を「ルールに基づく国際秩序の信頼できる擁護者」としてアピールすることができる。インド太平洋に対する日本とEUの同期したアプローチは、中国を中心とした権威主義的な強制に対する強力な外交的カウンターウェイト(対抗力)となるだろう。

