「宇宙でラーメンが食べたい」という夢

ほかのクルーへ迷惑をかけないよう、においが強い食品も制限されています。宇宙で納豆を心置きなく食べられる日はまだ遠いようです。

保存がきかないもの、電子レンジ調理が必要なものも宇宙には持ち込めません。レンジは、電磁波で食品内の水分を細かく振動させることで食品を温めます。この電磁波が精密機器に悪影響を与える可能性があり、ISSには設置されていないためです。

熱々のものも食べられません。ISSでも理論上は水を沸騰、つまり100℃にすることは可能です。しかし、無重力下で80℃以上に上げると、蛇口からお湯を出した瞬間に噴き出してやけどをするリスクがあるため、上限は80℃に設定されています。

また、重力の関係で、汁が多いタイプの食べものもご法度。したがって、宇宙で熱々のラーメンを食べるのは夢のまた夢……だったのです、ある時期までは。

晴れて宇宙飛行士になった私には、どうしてもかなえたい夢がありました。

「宇宙でラーメンが食べたい!」

そこで私はJAXAの職員と日清食品さんと協力し、宇宙で食べられるラーメンの開発に取り組みました。

日清食品と開発「宇宙版カップヌードル」

試行錯誤のすえに完成したラーメンは、麺は空中に浮かないようにひと口大のかたまり状になっており、スープはあんかけ状の宇宙仕様。

見た目は地上のそれとはかなり違いましたが、お湯をそそいで食べてみると味はまさにカップヌードル! カップヌードルに欠かせない“謎肉”もしっかり入っていて、「宇宙でラーメンが食べたい」という野望は見事に果たされたのです。

そして、その瞬間に私は「宇宙ではじめてラーメンを食べた人類」という称号を手に入れ、私が食べた宇宙食ラーメンは、「開発費がもっとも高く、地上からもっとも高い場所で食べられたラーメン」になりました。2005年のことです。

世界初の宇宙食ラーメンを食べている瞬間
世界初の宇宙食ラーメンを食べている瞬間(『宇宙でラーメンは食べられるか 宇宙暮らしのロマンと現実』より)

その後、宇宙食ラーメンはJAXAが認証する「宇宙日本食」の一つとなり、現在ではシーフードやチキン、カレーなどのバリエーションも楽しめます。

ちなみに2020年には、私は宇宙で「U.F.O.」とも遭遇しています! といっても未確認飛行物体のほうではなく、カップ焼きそばのほうです。焼きそばはラーメンと並ぶ好物の一つ。

再び日清食品さんの協力を仰ぎ、日本でおなじみのあのカップ焼きそばを宇宙用に開発してもらったのです。

人類の食にかける情熱には際限がありません。宇宙食はすでに300種類以上ありますが、今後も増えつづけることでしょう。みなさんが宇宙で暮らすようになるころには、地上と変わらないスタイルでラーメンをすすることができるかもしれません。