※本稿は、野口聡一『宇宙でラーメンは食べられるか 宇宙暮らしのロマンと現実』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
宇宙でおしゃれは難しい
宇宙は究極のファッション砂漠です。「今日はこのトップスにこのボトムスを合わせて」なんてコーディネートを楽しむ余地はゼロ。流行に敏感なファッショニスタや旅先でもおしゃれを楽しみたい人は、残念ながら宇宙での暮らしには向いていないかもしれません。
宇宙飛行士の服は宇宙服と船内服に大別できます。宇宙服は生命維持装置を備えた高性能スーツで、ヘルメットや手袋をつけて全身をおおっているものです。みなさんが想像する宇宙服は通常こちらでしょう。
じつは、この宇宙服にも2種類あります。打ち上げ時や帰還時に操縦席に座って宇宙船を操作するときに着用する「船内与圧服」と、ISS(国際宇宙ステーション)の外で活動する際に着用する、大型のバックパックつきの「船外活動服」です。
いっぽう、船内服は、ISS内で生活するための、いわば普段着です。ISS内は温度や湿度が一定に保たれているため、船内服は地上の服とほぼ同じ。ポロシャツやTシャツに長ズボン、短パンといったカジュアルな格好が定番となっています。
洗濯ができず、服はすべて使い捨て
ただ、地上とは異なる点もあります。宇宙ではファッション性よりも安全性と機能性が優先されるため、服装の選択肢が極めて限られるのです。
火災はISSにおける重大なリスクの一つです。火事が起こったら、閉鎖空間であるISSには逃げ場がありません。
したがって船内服の素材は、静電気が起こりやすく、火災の原因になる可能性がある化学繊維はNG。難燃性にすぐれた綿100%が基本となります。加えて、安全性実証試験と飛行安全性審査をパスしなければ宇宙には持って行けません。
さらに、船内服は使い捨てで枚数制限があります。ISSでは水は貴重な資源であり、汚れた水を処理する設備もありません。そのため洗濯ができず、服はすべて使い捨て。
だからといって、滞在日数分の衣服を持って行ったら、ISSが宇宙飛行士の服であふれかえってしまうでしょう。そこで、支給される船内服の枚数があらかじめ決められています。

