経済よりも政治が問題のカギを握っている
ここで考えるべきは、在庫の数字そのものより、その数字を成り立たせている前提だ。どれだけ在庫があっても、尽きる前に次の荷が着かなければ意味がない。そして、その「次」が来るかどうかを決めるのは、もはや相場だけではない。
4月10日、ロイターは、ホルムズ海峡の混乱を受けてアジア向けの米国産原油に1バレルあたり30~40ドルのプレミアムがついたと報じた。
戦争危険保険の引き受け停止も起きている。ここまでくると、問題は「高い石油」ではない。「そもそも船が動くのか」「保険が付くのか」「寄港できるのか」という段階に入る。
さらに象徴的なのは、ホルムズ海峡を通る船が、価格より「誰が通航を許されるのか」という外交・政治の論理に左右され始めていることだ。東南アジア各国はイランとの個別交渉で通航許可を得たと公表し、ロイターも日本やマレーシアなどにつながる一部船舶の通過を伝えている。
市場が「値段で買える世界」から「誰が通れるかの世界」に近づいたとき、国家の強さを決めるのは備蓄量の多寡だけではない。ルートの太さ、外交力、代替調達の速さである。
日本の弱点は「中東依存」だけではない
日本は原油の9割超を中東に依存している。しかも資源エネルギー庁が示すように、日本を含む東アジアの原油輸入は、ホルムズ海峡とマラッカ海峡という二つのチョークポイントを通る。要するに、日本の弱点は「中東依存」だけではない。「通り道への依存」でもある。
石油化学でも同じ構図がある。独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によれば、日本のエチレン生産は製油所でつくるナフサと輸入ナフサの両方に依存し、輸入ナフサの比率は6割、そのうち約半分が中東由来だ。
つまりナフサ不足論争とは、石油化学だけの特殊な問題ではない。エネルギー、物流、化学、医療、生活資材が同じ地政学的ボトルネックにぶら下がっていることの、見えやすい症状にすぎない。
だから、いま問うべきは「ナフサは本当に足りるのか」だけではない。中東以外からの調達を次の危機でもすぐ増やせるのか。船腹、保険、港湾、積み替えまで含めて、実際に動く計画を持っているのか。国家として見るべき数字は、在庫日数だけではない。

