観光客はシカを見守ることが原則
筆者はあらためて奈良公園に赴き、シカたちを見ていたが、確かになんとも言えない可愛さがある。可愛いさあまり、食べ物をたくさんあげたくなる気持ちは理解できなくはない。だが、それは本来のシカと人間の付き合い方ではないのだろう。
「頭数についても、人間のエゴとは別の論点が必要だ。現在の1465頭というのは面積単位で見ると明らかに多いのは確かだが、頭数だけで適正か否かを議論できないのもまた事実。江戸時代の記録を見ると、春日山の東側(現在のC・D地区)では、鹿を捕獲していたことも明らかになっている。捕獲対象のシカは、現在と同じように農作物被害を起こした個体だったようだ」(立澤氏)
奈良県は「奈良のシカ保護に関する基本方針案」の中で、「観光客はシカを『見守る』ことを原則として、体に触れるなどの接触はしない」と確認した。
確かに、方針としては正しいのだろう。だが、神鹿が神鹿であるためには、細かなルールだけでは不十分で、人間が対象に対して畏れを見つけなければならなかった。当然、行政は人に認識まで強要できない。シカの方は、どうだろうか。神の使いからペットになるという気持ちは――。

