オスジカは「旅に出る」

野生動物の生態学が専門で、奈良のシカの研究に30年以上にわたって従事しているのが、奈良大学文学部教授の立澤史郎氏だ。

山下知事を含め、いくつかの専門家は「奈良市内で増えすぎたシカの間で生存競争が激しくなっているのでは」という仮説を提示したが、立澤氏は“生存競争”という表現は正鵠を得たものではないと指摘する。

「(奈良のシカも含めた)ニホンジカのオスは、1〜2歳になると母親の元を離れ、単独で行動する。今回の個体のように、非常に遠くまで旅に出る個体も珍しくないが、数年で大人になり元いた場所に帰ってくる個体もいる。メスは終生母親と行動するのが一般的だが、オスは大人になる前に親元を離れる。つまり、シカの数が多いか少ないかにかかわらず、『オスは旅に出る』のだ」(立澤氏)