ビットコインが世界通貨になる⁉
【アワタニ】そうすると、ビットコインってこれからどうなるんですかね。
【松田さん】「ビットコインこそ世界通貨になるんじゃないか」って考える人が一定数います。この世界通貨という考え方、じつは古くからあるんですよ。
【アワタニ】世界通貨ってかっこいいですね! どんな考え方なんですか。
【松田さん】第二次世界大戦の末期・1944年に、世界は新しい国際通貨のしくみをつくろうとしました。そのとき経済学者のケインズが「特定の国のお金を基準にするんじゃなく国際決済通貨『バンコール(*4)』をつくろう」って提案したんです。
【アワタニ】そんな構想があったんですね。
【松田さん】でも結局、米国が強すぎて採用されませんでした。代わりに「ドルを世界の基準にする。ただし米国はドルと金(ゴールド)を交換することを約束する」というしくみができた。これがブレトンウッズ体制です。
ドル基軸制度が持続不可能になりつつある
【アワタニ】金という裏づけがあったから、みんな安心してドルを使えたと。
【松田さん】そうです。ところが1971年、米国は突然その約束を反故にしました。ニクソン・ショックです。それで世界は変動相場制に移行しました。
【アワタニ】そこから、お金を刷りまくる流れが止まらなくなったんですよね。
【松田さん】そう。変動相場制で50年以上経ってドルに不安を感じた人々の一部が、ビットコインを買うようになり、価格が高騰しました。このビットコインは、どこかの国がつくったわけでも誰かがコントロールしているわけでもなく、発行数に上限がある。だから「新しい世界通貨になるんじゃないか」と期待する人もいます。
【アワタニ】ケインズが夢見た世界通貨が、80年の時を経てビットコインという形で実現するかもしれないと。
【松田さん】個人的には、ビットコインが世界通貨になるとまでは思いませんが、ニクソン・ショックから50年経過して、信用だけに裏付けられた現代のドル基軸制度が持続不可能になりつつあることは事実でしょう。そして次の新たな秩序のなかで、ビットコインが大きな役割を担う可能性は高いと考えています。その一つは、最近流行りの「デジタルゴールド」という言葉に表れています。
ビットコインは人間社会の鏡
【アワタニ】ビットコイン、夢がありますね。僕は、これまでまったく知らなかったお金の世界の話を聞くうちに、少しずつ人の内面がわかるような気がしてきました。人がいかにお金に振り回されているか、行動だけでなく感情までコントロールされているかが。
【松田さん】ビットコインは単なるシステムで実体がないからこそ、社会の鏡になり、そこには喜怒哀楽だけでなく、ズルいところも汚いところも包み隠さず現れます。それを不快に感じる人もいるかもしれません。真実の姿を見るのはつらいものですから。お金が絡むと人は本性を現すので、逆に言えば噓偽りのない世界が見えてきます。
【アワタニ】「あの人が頑張っているから」みたいな美徳はマーケットには存在しない、だから仁義なき戦いが続くと。
【松田さん】じつはマーケットで大成した人には、まともな人も多いんです。競争を生き残るために習得した行動様式は、効率がいいだけでなく意外と道徳的です。もしマーケットで通用しない美徳があるとしたら、それは「建前」というか、本来人間が生きていくうえで必ずしも必要ではないものかもしれません。
【アワタニ】厳しい環境だからこそ、本質が浮かび上がるのかな。
【松田さん】おっしゃるとおりです。私はそれを「ビットコイン現象」と呼んでいます。ビットコインに起こっていることの裏側には人間社会の問題点が映し出されていて、よく見ていると人がどんな生き物で、どう考えどう動くかが、わかってくる。マーケットはいつだって、人の思いの総和ですから。
*4 バンコール
経済学者ケインズが第二次世界大戦中に提唱した国際通貨の構想。どの国にも属さない世界共通の通貨をつくろうとしたが、米国の反対で実現しなかった。


