【田原】もう日本を見放しちゃったわけだ。海外はどうです。いろいろ仕事の依頼もくるでしょう。
【猪子】うん、アジアが多いですね。台湾、シンガポール、香港、上海、あとはドバイとか。アジアはみんな若い。20世紀ではないんです。
【田原】アジアで20世紀を生きているのは日本だけということ?
【猪子】そう。アジアに20世紀はなかったから、21世紀を全面的に肯定している。日本は20世紀が、つまり情報社会前の社会で成功しすぎたから、それが大好きで離れられない。法律も産業も、ぜんぶです。
【田原】ぜんぶって、どういうこと?
【猪子】たとえば仕事の仕方も違います。アジアだと、ミーティングにノートパソコンを持ち込むのは普通の行為です。大統領の会談みたいな公式の場でもタブレットでメモってたりする。でも日本だと、会議で話しながらパソコンを打つのは失礼だと思われる。だから紙にペンでメモを取ったりするわけです。でも、21世紀の普通の感覚の人から見ると、逆にそれが失礼。書いたことを独り占めにして、みんなと共有しないわけだからね。こそこそ個人作業するほうがずっと無礼なことなんだけど、日本人はそれがわからない。
【田原】個別の国についても聞きたい。中国はどうですか。政治は中国共産党一党で支配されているけど、やっぱり未来を見ている?
【猪子】中国も20世紀はなかったから未来を見てますよ。そもそも民主主義は関係ないです。たとえばシンガポールはすごい未来志向だけど、あそこも民主主義ではないし。