バフェットが見抜いた「見えない強さ」

復活の兆しは、実は昨日今日の話ではない。マクロ経済の統計を紐解けば、「停滞」と捉えられていた30年間、日本企業は水面下で産業構造を強かに変革してきた。

1990年代後半、韓国・台湾・中国が低コストを武器に台頭し、家電での優位が崩れると、大手各社は半導体製造装置、精密化学品、炭素繊維、特殊鋼といった模倣の難しい上流技術へ軸足を移した。

事業の中核をシフトし、時代に適応した例もある。富士フイルムは写真用フィルムで培った化学技術を、医療・先端素材へ転用。日立製作所は家電中心の総合電機メーカーから、社会インフラ・ITサービス企業へと大胆に転換した。

かつて看板事業だった領域を潔く手放し、事業ポートフォリオを大きく組み替えたのだ。アジア新興国の台頭は当初脅威だっただろうが、むしろ収益を拡大する機会に昇華した。

こうした「見えない強さ」を見抜いた投資家がいる。「投資の神様」と名高い、ウォーレン・バフェット氏だ。上場約4000社を収めた「会社四季報」をめくるうちに、日本の5大商社株が「馬鹿げたほどの安値」で見過ごされていることに気づいた。ブルームバーグ・コラムニストのリーディー・ガロウド氏は寄稿記事(2025年5月13日)を通じ、それから約1年かけて株式をひそかに買い集め、2020年に取得を公表したと総括している。保有額はいまや250億ドル(約3兆7500億円)を超える。

GDPには反映されない「日本の底力」

バフェット氏が繰り返し口にするのは、外からの圧力に流されず我が道を行く日本企業の強さだ。トヨタはEVへの全面転換を迫る声を退け、ハイブリッド戦略を貫いて5年連続で世界販売首位を守った。任天堂も自社ハードを捨てスマホ向けソーシャルゲームへの移行を求める声をよそに、「Nintendo Switch」で累計1000億ドル超(約15兆5000億円)を売り上げている。

Nintendo Switch
Nintendo Switch(写真=Evan-Amos/PD-self/Wikimedia Commons

こうした独自の強さは、国際指標にも裏づけられている。UCSD政策大学院ニュースサイトのGPSニュースが紹介するハーバード大学グロースラボの調査によると、輸出品に求められる技術の高度さを測る「複雑性」指標で、日本は世界首位に立つ。GDPの数字には反映されない独自の力を、日本企業は「失われた」とさえ言われる30年をかけて、着実に育て上げてきた。