「大人向けの作品」ばかり供給してきた

なぜこのような違いが生じるのか。

日本のデジタルコミック市場は課金率・額の高い大人向けの作品を中心に成長した。そのため、決済手段をもたない、または少額しか決済できない小中高生は軽んじられている。だから若年層向けのマンガの供給自体が少ない。

小中高生が読むようなマンガがそもそもウェブ上に少ないのだから、当然、若年層は読みに来ない。

また、マンガアプリの利用推奨年齢は、大抵、15歳以上または18歳以上に設定されている。

マンガアプリの本格的な台頭は2013~2014年からだが、小学生向けのウェブマンガ誌「週刊コロコロコミック」は2022年になってようやく始まった。

これではかつてのように未成年がさかんにマンガを読んでくれるはずがない。

マンガを描く人
写真=iStock.com/Sensay
10代の「マンガ離れ」はもう止まらない(※写真はイメージです)

韓国では「ウェブトゥーン」が大人気

一方、韓国のウェブトゥーンは、1990年代末に「エッセイトゥーン」と呼ばれる、作家の分身を登場させた「身辺雑記」というか、詩ともエッセイともつかない作品群が支持された。それをきっかけに、2000年代初頭にはNAVERやダウムといったポータルサイト(日本で言えば「Yahoo! JAPAN」のようなサービス)が、ウェブトゥーンサービスを手がけるようになる。

ポータルサイトは主にウェブ広告で収益を稼ぐために、無料でとにかく幅広い読者に読まれる作品が重宝された。そこではエッセイトゥーンに加えて、チュソク『ココロの声』をはじめとするギャグマンガ、キアン84のようにコメディ作家であり芸能人化してテレビやYouTubeで注目される作家などが人気を博した。日本で定番化している学習マンガ『つかめ!理科ダマン』も、ウェブトゥーン『離さないで!精神線』のスピンオフ作品だ。同作は「小統領」、つまり「小学生の大統領」と形容されるほどに低年齢の読者に支持された。

その後、2010年代以降にウェブトゥーンの課金システムが整備されてロマンスファンタジーやアクションがよく売れるようになり、映画やドラマの原作企画としてロマコメ(ロマンスコメディ)やヒューマンドラマ、ホラーなどへの注目も高まった。

しかし今でも無料で読まれるギャグ、コメディ、エッセイジャンルも併存している。また、韓国ではNAVER Webtoonは今でも無料でおそらく9割以上の作品を読むことができる。だから、お金のない若年層もカジュアルに読んでいる。

つまり韓国ウェブトゥーンは「閲覧無料で幅広く読まれる作品」「よく課金される作品」「映像化向きの作品」の3階建てになっている。

一方、日本のデジタルコミック市場はこの1階部分が弱く、だから子どもが入ってきづらい。

「日本はマンガ大国」「マンガを軸にしたIP展開で外貨を稼ぐ成長戦略を」などと言われている。だが、小さいころからマンガに親しんでいなければ、作家になろうと思う人の数も減る。作家になっても読者の数が少なければ生業なりわいとして成り立たない。

その負のスパイラルが静かに進行しており、足元から瓦解しかけている、と筆者は思う。

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