ブッシュ大統領の「イラク侵攻」より酷い

ブッシュ大統領時、イラク侵攻を計画していたアメリカは安保理に訴えかけた。パウエル国務長官は安保理で「証拠写真」を貼った大きなパネルを持ち出して、他国を懸命に説得した。それらの「証拠」はどれも眉唾物で、結局ブッシュ政権が国際社会の意を無視してイラクを侵略したのは、周知の通りである。しかし、国際機関に対する努力があったのは、否定できない。

2001年9月20日、ジョージ・ブッシュ大統領が、9月11日の米国に対するテロ攻撃に関する演説を行った
ジョージ・W・ブッシュ大統領、2001年9月20日(写真=米国国立公文書館/Files from Flickr's 'The Commons'/Wikimedia Commons

それに対して、ことあるごとに国連を侮蔑し続けるトランプ大統領(およびイスラエルのネタニヤフ首相)は、国連のお墨付きをもらうための努力を一切していない。それどころかイランとの交渉中に奇襲攻撃をかけて、それが(多くのアメリカ人が「日本人は信用できない」という主張の根拠としてきた)真珠湾攻撃に似た戦術とトランプ氏は誇りを持っているようである。

国際法では安保理が決定した以外の武力行使が禁止されているが、唯一の例外として自衛、俗にいう正当防衛がある。無論正当防衛とさえ言えばなんでも許されるものでなく、判例などで認められてきた要件がある。必ずしも他国に実際に攻撃されるまで待つ必要はないが、他国による攻撃は明白で、なおかつ急迫したものでなければいけない(必要性)。また、自衛権行使として使った武力は事態に適して相応なものである必要がある(均衡性)。

トランプ大統領の主張は「無理筋」

ケースバイケースの判断になるので方程式といったものはないが、攻撃の命令がなされて、今にもミサイルが発射される状況や、相手の軍隊がこちらに向かって進軍しているイメージである。なお自衛権はいつまでも続くわけでなく、やはり安保理が決定を下すまでの間だけ続くものとされる。

今回の攻撃についてのトランプ政権の説明は猫の目のように変化しており、いまだに不明瞭であるが、正当防衛のつもりかも、と説明されることもある。曰く、イランは核兵器や長距離弾道ミサイルを開発中であった、あと数週間でそれらが利用できるという急迫した事態であった、という説明である。

今までの経緯を見ても「イランは核兵器をゲット寸前」というトランプ氏の主張には説得力がなく、イランの核施設を査察してきた国連原子力機関もそれを否定している(なおイラン政府は、核兵器開発を一貫して否定している)。仮に本当にイランが核兵器を開発できたとしても、それで他国を攻撃するという根拠はない。すなわち急迫性があるとは到底言えず、経済制裁などで十分に対応できたはずである。