疑問に思うことはなんでも質問する
ところが、「検査はしなくていいので薬だけ出してください」という患者さんや、「病気は薬を飲みさえすれば治る」と思っている患者さんが、実にたくさんいます。特に、コロナ禍以降に増えました。
先ほども言いましたが、治療には検査が不可欠です。病状は変わりますから、同じ薬を飲んでいるからといって、病気が改善して、その状態をコントロールできているとは限りません。ところが、それを理解していない患者さんが多いのです。
この問題を解決するためには、医者が患者さんの信頼を得ることが大事であると私は考えています。患者さんが医者の言うことを本当に信頼すれば、どの検査も治療も必要があるからだと理解して、受けてくれるはずです。
もちろん、疑問に思うことはなんでも質問してください。ただ、検査や治療についてはどんなに説明しても、患者さんが医学的に理解するのは難しいでしょう。だからこそ、医者を信頼できるか否かが大切なのです。
例えば、血液検査でも、医療の正しい知識がなければ、それぞれの検査数値の意味は理解できません。医学部に6年間通い、医師国家試験に合格して、それなりの臨床経験を積んでやっと理解できるくらいの内容です。さまざまな検査の数値を総合的に判断するとなればなおさらです。
もちろん、医者はできるだけわかりやすく説明します。説明する能力は医者にとって大事なコミュニケーションスキルですから、いい医者の条件です。大きな手術の際には、手術前に詳しい資料を渡す病院もあります。ただ、医療の知識が少ない患者さんが、検査や治療について詳しく説明されても、きちんと理解するのはなかなか難しいでしょう。
「信頼した先生にゆだねるしかない」
ちょっと話が大げさになりましたが、「医者に質問するな」「医者を信用するな」ということでは、決してありません。いろいろな質問をして、その先生の答えに納得して、信用できると感じたのなら、あとはすべてまかせるのが、理想的な医者と患者さんの関係だと私は思います。
結局は、「信頼した先生にゆだねるしかない」というのが現実的な話ではないでしょうか。そのためにするべきことは、「この先生だったら自分の命を預けることができる」という、信頼できる医者を探すことです。
そして患者さんは、信頼できる医者から必要な医療を提示されたときには、それにかかる医療費は惜しむことなく出して、適切な検査・治療・手術などを受けて欲しい――そう願っています。


