アメリカ・イスラエルとイランの戦争でホルムズ海峡が事実上封鎖され、世界の石油供給が滞っている。だが海外メディアが警告するのは、石油よりも深刻な危機だ。世界の肥料海上貿易の3分の1が同海峡を通る。4月の作付けシーズンを前に肥料が手に入らず、秋の収穫が危ぶまれている――。
2026年3月11日(水)、ホルムズ海峡でイランの無人水上艇(USV)による攻撃を受けた後、炎上するタイ船「マユリー・ナリー」(タイ王国海軍が公開)
写真=EPN/ニューズコム/共同通信イメージズ
2026年3月11日(水)、ホルムズ海峡でイランの無人水上艇(USV)による攻撃を受けた後、炎上するタイ船「マユリー・ナリー」(タイ王国海軍が公開)

米クルマ社会に広がる動揺

全米で最もガソリンが高い州として知られるカリフォルニアに、イラン戦争の衝撃が押し寄せている。

全米自動車協会(AAA)によると、州平均のガソリン価格は1ガロン5.5ドル。これはリットル換算で約227円/Lに相当し、史上最高値を更新した日本の全国平均190.8円すら上回る。

米公共ラジオ放送局のNPRはサンノゼ市内のスタンドで、消費者の声を集めた。新車のメルセデスSUVで乗り付けたカーン・リキさんの目に映ったのは、レギュラー6ドル(約247円/L)、プレミアム6.39ドル(約263円/L)の店頭表示だったという。「先週この車を買ったとき、こんなことになるとは思いもしなかった」と語るリキさんのように、動揺はクルマ社会の全米に広がっている。

ディーゼル価格も1ガロン5ドル(約206円/L)を突破し、3年以上ぶりの高値を付けている。

トラック、鉄道、河川を行くバージ船など、アメリカの物流を担う輸送手段は、多くがディーゼル燃料で動く。米ビジネスニュース専門局のCNBCによると、全国平均は1ガロンあたり5.04ドル(約208円/L)。アメリカ・イスラエルがイランへの大規模空爆に踏み切る前日と比べ、34%急騰した。

ディーゼルが上がれば、モノを運ぶコストが一斉に膨らむ。トラック会社や鉄道会社はすでに燃料サーチャージを引き上げており、その上乗せ分を最終的に背負うのは消費者だ。

海運の急所が封じられた

アメリカや世界を揺るがす危機を呼び起こしたのは、幅わずか34キロのホルムズ海峡だ。

この海峡で今、150隻を超えるタンカーが身動きのとれないまま、ペルシャ湾内に停泊している。ベルギー発EU専門英字メディアのブリュッセル・シグナルによると、超大型原油タンカー(VLCC)の運賃は航行1日あたり42万ドル超(約6510万円)と史上最高値を記録した。前日比94%超の急騰である。