EUは2027年末までにロシア産ガスを全面停止する計画を掲げるが、米シンクタンクの大西洋評議会によれば、代替先の柱であるはずのアメリカ産LNGさえ、中東情勢の悪化で供給が危うくなっている。ドイツの原発全廃に象徴されるように、域内ではエネルギー基盤全体が揺らぎ始めている。同評議会の表現を借りれば、欧州は「銃撃戦にナイフで挑む」ような厳しい状況だ。
中でもドイツでは、空洞化がいっそう際立つ。ユーロニュースの取材に対し、ドイツ農業工業協会(IVA)のマルティン・マイ専務理事は、ロシア産ガスなしでは採算が合わず、国内の肥料工場が次々と閉鎖に追いやられていると語った。
農業以外に目を向ければ、航空産業もまた、ホルムズ海峡への依存が顕著だ。ブリュッセル・シグナルによると、欧州のジェット燃料の約30%が同海峡経由で供給されており、封鎖後、価格は1バレル85〜90ドル(約1万3200〜1万4000円)から150〜200ドル(約2万3300〜3万1000円)へ跳ね上がった。もともと利益率が4%にも満たない欧州の航空業界にとって、まさに死活問題だ。
補助金と備蓄で時間を稼ぐ日本
日本も影響を免れない。米ブルームバーグが伝えた3月16日時点のレギュラーガソリン全国平均は、1リットル190.8円。経済産業省によれば、史上最高値だ。
資源エネルギー庁は、わずか1週間で29円跳ね上がったとしている。都内の一部スタンドではすでに200円の大台を超えた。政府は19日から補助金を投入したが、心許ない財源でいつまで続けられるか不透明だ。
燃料補助の基金残高は約2800億円にすぎない。みずほリサーチ&テクノロジーズのチーフ日本経済エコノミスト、服部直樹氏の試算では、ガソリン小売価格が200円水準で推移すれば、4月半ばには資金が底をつく。2025年度の予備費を投じても8月半ばまで、2026年度分まで注ぎ込んでも12月半ばが限界だという。ホルムズ海峡の危機が長引けば、政府は数カ月で補助金の原資を使い切る。
航空券も値上がりを免れない。国際航空運送協会(IATA)のウィリー・ウォルシュ事務局長は、航空業界では燃料費が運営コストの約4分の1を占めており、運賃は最大9%上がる可能性があると指摘。日本発着の路線も例外ではない。
ガソリンが配給制になった国も
先進国が補助金で値上がりを緩和する一方で、新興国ではすでに深刻な燃料危機が到来している。一部では配給制が始まった。
アルジャジーラによると、スリランカは3月15日、QRコードによる燃料の割当制に踏み切った。車両の所有者はオンラインで事前に登録し、取得したQRコードをスタンドで提示しなければ給油できない。係員がコードをスキャンし、車両ごとに週の給油量を管理する。

