混合診療禁止の問題と自由診療の現実
一人でも多くの患者さんが人工透析になるのを防ぎたい――そう思ったため、私は自由診療のクリニックを始めました。自由診療なのは、患者さんを人工透析から救う最新の治療を行うと混合診療になってしまうからです。保険では認められていない薬や検査が必要なので、自由診療にするしかないのです。
これを解決するには混合診療が認められることが必須です。そうならなければ、医療の進歩が急激な現代では、患者さんの不利益につながってしまいます。
混合診療を禁止するのは国としての理由があるのでしょうが、このまま続けていくのには無理があります。患者さんの不利益を解消するため、将来的には混合診療が認められるようになるのだろうと考えています。
国民皆保険だと、医者も医療機器も不足している病院で治療を受けても、最新の医療機器と熟練の技を持つ医者を備えたトップクラスの大学病院で治療を受けても、同じ手術を受けたのであれば、まったく同じ料金となり診療報酬に変わりはありません。これは、ある意味では不公平です。
質がいい医療を提供してもほかと変わらない料金では、欧米のように病院や医者が切磋琢磨するような環境にはならないでしょう。
患者さんにとっては、安いお金で最高の医療が受けられるのであれば、それが理想でしょう。しかし、国民皆保険の制度では高額な医療費を国や地方自治体も負担することになります。最新の高額な医療を公的医療保険の適用にすると、医療費で国や自治体の予算が破綻してしまうかもしれません。
それを避けるためにも、混合診療を認め、希望する患者さんに自由診療の範囲に含まれる最新医療が受けられるようにしたほうがいい――私はそう考えています。
新しいタイプの抗ガン剤治療が受けられない
自由診療は、医療を提供する病院や医者がそれぞれで価格を設定し、患者さんはその金額の100%を支払います。当然、自己負担額が1~3割の公的医療保険の診療よりも、はるかに高い金額を支払うことになります。
もちろん、公的医療保険の診療でいい治療が受けられるのでしたらそのほうがいいに決まっています。かつては、保険診療だけで、いい治療が行われていたので、自由診療の必要性を主張する医者はほとんどいませんでした。
ところが、医療はものすごい勢いで進歩し、それまでにはなかった命が助かるような薬や治療法がどんどん開発されています。
代表的なのがガンの治療です。以前は、「ガン=死」と言われるほど、命に関わる恐ろしい病気でした。そのため、現在でも「ガンにだけはなりたくない」と願っている人がほとんどでしょう。
しかし、ガンの治療法も進歩して、治癒率は格段に上がってきています。抗ガン剤も劇的に効くものが次々と開発されており、必ずしも「死に至る病」ではなくなってきているのです。
特に抗ガン剤の進歩は目覚ましく、ガン患者の生存率の向上に大きく貢献しています。
一昔前の抗ガン剤は副作用が強く、体への負担が大きいため、「抗ガン剤は毒」「抗ガン剤に殺される」といったマイナスイメージを持たれていました。
現在は、ガンをピンポイントに攻撃し、ピタッと合ったタイプのガンに劇的に効く「分子標的薬」という、新しいタイプの抗ガン剤が次々と開発されています。しかしながら、こういった新しい薬は公的医療保険の適用外のものが多いのです。
また、どのタイプの抗ガン剤が適しているのかを判断するための知識や経験が必要です。実は欧米では、ガン治療は薬物療法を専門とする「腫瘍内科医」が中心になって治療を進めています。


