腫瘍内科医の不足と新薬承認のジレンマ

ところが、日本ではこの腫瘍内科医が圧倒的に不足しています。2019年のデータによると、アメリカの腫瘍内科医は約1万7000人、それに対し日本では1300人程度、10分の1以下という少なさです。

さらに、日本では新薬が承認されるまでに時間がかかりすぎるという大きな問題も潜んでいます。そしてそれは、現在の日本の公的医療保険制度のデメリットでもあるのです。

基本的にひとつの薬が開発されたとき、有効性や安全性のデータを国に提出して審査を受けます。病院や医者がその薬を処方できるのは、国がそれらのデータをチェックして承認が得られてからになります。

承認が得られるまでには数年かかりますし、海外で承認が得られたとしても、日本でその薬が承認されるまでにさらに時間がかかります。

FDA承認の概念
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例えば、欧米で承認されていて、非常に効果が高い薬があったとしても、日本で承認されるまで待たなければなりません。これらは「国内未承認薬」と言われ、治療に使用した場合は、その薬代はもちろん、本来なら公的医療保険の適用になる治療費もすべて保険適用外となり、全額を自己負担することになります。

裁判でも認められなかった混合診療

もちろん、新しい薬にはリスクがあります。欧米で承認されたからといって、日本人にそのまま当てはまるかどうかはわかりません。日本で有効性や安全性を確認してから承認するという手続きは欠かせません。

ただ、ガンと闘っている患者さんは、承認されるまでの時間を待つことができないケースもあります。効果があるのであれば日本で承認されていない薬だとしても試したい――そう願うのは当然のことでしょう。

このようなとき、通常の薬は保険診療で支払い、承認されていない薬だけ自由診療で支払うのが理想なのですが、日本では混合診療が禁止されているので、それが認められません。

公的医療保険が適用される治療を選ぶか、通常の薬代を含めすべて自己負担で(この場合、莫大なお金がかかります)承認されていない薬を使うか、どちらかを選ぶしかないのです。これは国の法律で決められているルールですから、どうしようもありません。

この問題に関して、ある患者さんが「日本のルールが間違っている」と裁判を起こしたことがあります。しかし、その裁判では混合診療は認められませんでした。

ですから、ガン患者さんが、「どうしても助かりたい。保険がきかない最新の治療を受けたい」と思ったときには、すべての治療費を自己負担でするしかないというのが、現在の日本のルールです。