「筋トレをするイメージ」だけで効果あり
もう1つ、この脳のしくみに関連したおもしろい研究を紹介します。
アメリカのルイジアナ州立大学医学センターで行われた研究で、イメージトレーニングが大腿四頭筋の筋力増強に及ぼす効果を検証したものです(※2)。
研究の参加者は、筋肉が収縮しているのを頭の中でイメージするだけのトレーニングをしたグループと、まったく何もしないグループに分けられました。
イメージトレーニンググループの参加者は、30分間にわたり大腿四頭筋の収縮を頭の中だけで具体的に思い描くように指示され、これを4日間継続しました。
その結果、イメージトレーニングを行った参加者は、何も行わなかった参加者と比較して、大腿四頭筋の筋力が平均12.6%増加したことが確認されたのです(イメージトレーニンググループの参加者の筋肉が収縮していないことは、筋電図でしっかりと確認されていました)。
イメージトレーニングのみで、実際に筋収縮させていないにもかかわらず、脳神経系が刺激され、実際の筋力アップにつながったというわけです。
具体的には、脳内で運動イメージを繰り返すことで、脳内の運動制御ネットワークが活性化され、実際の筋収縮を制御する神経プログラムが強化されたのではないかと考えられています。
この脳のメカニズムの観点からいえば、反すうは今ここで起こっていない過去のネガティブな映像や言葉を、イメージ上のスクリーンで再上映しているようなものだといえます。
それならば、拡張版コンテイナーテクニックのようにネガティブな言葉や映像を「遠ざけるイメージ」や「壁をつくって負の刺激からしっかりと保護されているイメージ」を持ったりすること(イメージ操作)が有効である、といえます。
脳のメモリを使うと、反すうしにくくなる
もう1つ、反すうが生じるメカニズムについて、脳のしくみから見ていきたいと思います。
反すうは、脳のメモリに余裕があるときに起こりやすいことが知られています。
「何もやることがないと、よからぬことを考えてしまう」という人は少なくありません。
なぜ、そうなってしまうのでしょうか。それをひもとくカギがワーキングメモリという脳のしくみにあります(※3)。
ワーキングメモリとは、短期的に情報を保持しながら、何かしらの作業を行う能力のことです。私たちは日常生活でワーキングメモリを頻繁に使いながら、仕事や日常生活におけるちょっと複雑な思考や決断をしています。
「脳のキャパシティ」みたいなものとイメージしてください。
たとえば、店に電話をかけて予約をとるために、ウェブサイトなどで「03-XXXX-XXXX」という番号を見て、ちょっとの間だけ覚えておいて、スマホに入力するとします。
これは短時間の記憶保持(数秒〜数十秒)を必要とする作業です。
また、買いものをするときも、「今日はカレーにしよう。だから、牛肉、にんじん、じゃがいも、玉ねぎを買おう」などといったように、とくにリストも見ずに買いものをすることができます。
これは短期間の情報保持に加え、「どの順番で買うか」などの処理も含まれています。
これも、ワーキングメモリによる作業です。
もっと頻繁に行われているものでいえば、人との会話です。
相手の会話の内容をちょっとの間だけ覚えておいて、それに関連した話題を返すことができるのはワーキングメモリによるものです。
※2 Effect of Mental Practice on Isometric Muscular Strength Mark W.Cornwall, Melinda P. Bruscato, and Sally Barry Journal of Orthopaedic& Sports Physical Therapy 1991 13:5, 231-234.
※3 Baddeley, A. D., & Hitch, G. J. (1974). Working Memory. In G. A. Bower(Ed.), Recent Advances in Learning and Motivation (Vol. 8, pp. 47-89).New York: Academic Press.

