次々と消えていった「代官山らしい店」

こうした街の変化もあってか、かつてあった「代官山らしい店」も次々と姿を消していった。

たとえば、1987年のブランド誕生以来、10~20代の女性を中心に絶大な支持を集めたレトロポップな雑貨店「SWIMMER(スイマー)」は2014年に代官山本店が閉店。その姉妹ブランドである「chocoholic(チョコホリック)」に併設されていた「chocoholic cafe」も同年2014に閉店し、「chocoholic」の代官山本店も2016年に閉店している(その後、2018年にはどちらのブランドも終了し、全店閉店)。

また、可愛らしいピンク色の外観が目を引いた300円均一雑貨店「CouCou(クゥクゥ)」の代官山本店(2005年開業)も、2016年にひっそりと店を閉じた。さらに、1994年に開業し、国内外の優れたデザインを集めて洗練されたライフスタイルを提案し続けたインテリア雑貨店「ASSEMBLAGE(アッサンブラージュ)」も、2020年に代官山にあった実店舗の営業を終了している。

これらはみな、かつてメディアが「雑貨屋めぐりにいい街」と評した代官山の魅力を象徴する店舗だった。ECの台頭によって「わざわざ実店舗で雑貨を買う」という動機が薄れたことに加え、高騰し続ける家賃が重荷となり、客単価の低い雑貨店は撤退を余儀なくされたのだろう。こうして代官山は、街の個性を形作っていたピースを少しずつ失っていったのである。

にぎわいは「駅前」から「目的地」に移った

では、代官山に人がいないかといえば、まったく違う。駅から離れたエリアに目を向けると、対照的な光景が広がっていた。

2011年にオープンした「代官山T-SITE」
筆者撮影
2011年にオープンした「代官山T-SITE」。蔦屋書店も飲食店もすべての店が満員御礼だった

この日、もっとも活況を呈していたのが「代官山T-SITE」だった。蔦屋書店を核に、スターバックスやシェアラウンジ、複数の飲食店が集まるこの施設は、駐車場がほぼ満車状態。若者や外国人の姿が目立ち、飲食店もほぼ満席だった。

代官山T-SITEの駐車場。土曜日の14時頃に訪れたが、駐車場はほぼ満車。施設内も人であふれかえっており、ランチの時間帯を過ぎていたのに飲食店は満席でお店にならんでいる人も少なくなかった
筆者撮影
代官山T-SITEの駐車場。土曜日の14時頃に訪れたが、駐車場はほぼ満車。施設内も人であふれかえっており、ランチの時間帯を過ぎていたのに飲食店は満席でお店にならんでいる人も少なくなかった
代官山T-SITEの駐車場。土曜日の14時頃に訪れたが、駐車場はほぼ満車。施設内も人であふれかえっており、ランチの時間帯を過ぎていたのに飲食店は満席でお店にならんでいる人も少なくなかった

代官山T-SITEがこれだけの人を集める理由は、「ここに来る理由」の明確さに尽きる。これは冒頭で示したフォレストゲート代官山と決定的な差だ。

ここには、蔦屋書店という唯一無二のコンテンツ、洗練された空間、そして「代官山T-SITEに行く」という体験そのものが目的になっている。かつて代官山全体が持っていたものを、この施設が一手に担っているようにも見えた。