駅前の施設なのに、なぜ人が集まらないのか
この施設の問題は三つに集約できる。
➀「誰のための施設か」がぼやけている
来街者の顔ぶれを観察すると、犬を連れた人や子ども連れのファミリーが目立つ一方、かつての代官山らしいカップルやファッション感度の高い若者の姿は少ない。ペット同伴可の店舗が多く、開放的なつくりのカフェや飲食店が並ぶ。地域に根ざした施設としての姿勢は伝わるが、裏を返せば「近隣住民のための場所」という色が強く、代官山に憧れて訪れる人たちを引き寄せる求心力には乏しい。
②構造とテナントが“回遊しにくさ”を生んでいる
路地のような動線は魅力的に見えるが、初めて訪れる人には「どこに何があるのかわからない」という心理的なハードルにもなりうる。2階フロアに目を向けると、クリニックやフィットネスジムといった目的来店型のテナントが中心で、商業施設というより、オフィスビルに近い雰囲気が漂っていた。
加えて、広域から車で訪れる客を受け入れるための駐車場は閑散としており、確認できた駐車台数はわずか2台。都心部とはいえ、近隣の大型商業施設と競うにはあまりに心細い数字だ。
「誰のための施設なのか」がよく分からない
③価格帯のちぐはぐさ
施設内では2000円前後のランチを出すカジュアルな店と、4000円台のビュッフェが同居している。そのビュッフェ店はランチのピーク帯(11~13時)にもかかわらず、客は2〜3組にとどまっていた。対照的に、ブルーボトルコーヒーは満席に近い状態。「ここで休憩したい」「作業したい」という明確な目的を持つ客はチェーン店に集まるが、そのにぎわいが施設全体の回遊には結びついていない。
歩いて感じたことは、この施設が住民向けなのか、外からの来街者向けなのか、その立ち位置が定まっていないことだ。駅前の旗艦施設として街を牽引するには、もう一段、明確なコンセプトが必要なのではないか。そんな違和感を覚えた。

