大腸がんや乳がんの発生頻度を高める
これは「メタボリックドミノ」といって、2003年に慶應義塾大学医学部の伊藤裕教授が提唱した臨床概念です。このメタボリックドミノにおいて、脂肪肝はかなりの上流に位置しています。
つまり、上流の脂肪肝を発端として、下流へ行くに従って次から次へといろんな病気やトラブルに見舞われていき、いずれ命に関わるような重大な病気につながっていくということになるわけです。
なお、脂肪肝はいくつかのがんの発生リスクを高めることも研究で判明しています。肝臓がんのほか、それ以外のがん、とくに大腸がんや乳がんでは脂肪肝があると発生頻度が高まることが分かっているのです。
ちなみに、がんの発生については、最近、慢性炎症が大きく影響しているのではないかという説が注目を集めています。
脂肪肝があると免疫細胞のマクロファージが暴走して炎症を引き起こしますが、同じような機序の炎症刺激が、がん発生に影響しているのではないかと目されるようになってきているのです。
今後研究が進めば、脂肪肝のような異所性脂肪と炎症やがんとのつながりが、もっと明らかにされるようになるかもしれません。
放置すると糖尿病発症リスクが2〜5倍高まる
私は常日頃から「脂肪肝こそ万病のもと」という考え方を一般の方々にもっともっと広めたいと考えています。
脂肪肝患者の場合、2型糖尿病発症リスクは2〜5倍、心不全発症リスクは1.5倍、慢性腎臓病発症リスクは1.45倍……講演に呼ばれたときなども、こういったデータを紹介しつつ、「脂肪肝が多くの疾患を招き寄せてしまう怖ろしい病気」だということを強調するようにしています。
なぜなら、こうした「コトの重大性」を理解している人がまだまだ少ないと感じているからです。
ここ10年、メタボリック症候群のリスクが一般に浸透するとともに皮下脂肪や内臓脂肪の蓄積を気にする人はだいぶ増えましたが、それと同レベルで肝臓への脂肪蓄積を気にしている人はまだほとんどいないと言ってもいいのではないでしょうか。
でも、本当は皮下脂肪や内臓脂肪よりも肝臓の脂肪のほうが、メタボや生活習慣病の元凶となるヤバイ存在なのです。

