国民はもはや、プーチン氏が推し進める戦争の恐怖以上に、日々の物価のほうが切実だと感じている。

ウクライナ独立系英字紙のキーウ・インディペンデントによると、独立系世論調査機関レバダ・センターの昨年6月の調査で、58%のロシア人が「物価上昇」を最大の懸念に挙げた。ウクライナでの戦争自体を挙げたのは33%にとどまった。

一方、プーチン政権は密かに焦りを感じている。同紙によると、ロシア農業省と産業貿易省は、食料生産の80〜90%を固定価格で販売させる価格統制法案を策定中だ。2026年3月の施行を目指すと昨年から報じられている。

ロシア連邦の一般裁判所、軍事裁判所、仲裁裁判所の裁判官による年次会議に出席したプーチン大統領(2025年2月20日)
ロシア連邦の一般裁判所、軍事裁判所、仲裁裁判所の裁判官による年次会議に出席したプーチン大統領(2025年2月20日)(写真=kremlin.ru/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

1917年革命と同じ道を辿りかねない

だが、価格統制はプーチン政権に致命傷を与えかねない。

ロシア生まれの経済学者イゴール・リプシッツ氏はキーウ・インディペンデントに対し、「30年間の市場経済を経て、ロシア政府はソ連時代のような価格計画へ回帰し始めている」と断じた。

行き着く先は「慢性的な食料不足と長い行列」だという。国が価格を決めれば、採算の取れない生産者は倒産し、補助金がなければ食料危機はさらに深まると、同氏は警告する。

米戦略国際問題研究所(CSIS)上級研究員のマリア・スネゴバヤ氏は、さらに遠い過去を引き合いに出し、「1917年のロシア革命を引き起こした主要因の一つが食料価格の高騰だったことを忘れてはならない」と警告する。

実際、物資不足の兆しはすでに表れている。食料問題はプーチン政権が掲げる「すべては順調」という虚構を突き崩しかねないと、スネゴバヤ氏は見る。

一部の市民はすでに、食料価格高騰の原因が戦争にあると見抜いている。シベリア・イルクーツクに住むガリーナさんはメデューザに対し、ロシアが毎日ウクライナにもたらしている破壊行為を思えば、物価上昇は当然の帰結だと語った。

周囲の多くは「プーチンは知らないだけだ(知っていれば助けてくれるはずだ)」「一時的な困難にすぎない」「敵の仕業だ」と自分に言い聞かせているという。ロシアに根深い「善きツァーリ(皇帝)」の神話を、多くの市民は信じている。

だが、ガリーナさんはそうした幻想を持たない。「ウクライナの勝利とプーチン政権崩壊のために覚悟が必要なら、私はその準備ができている」とメデューザに語る。

食費を切り詰め、期限切れ食品を食べ続けるロシア国民。忍耐は果たしてどこまで続くだろうか。

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