交通事故を起こしたら、どんなことに気をつければいいのか。弁護士の藤吉修崇さんは「ドライブレコーダーがあるからと安心してはいけない。事故直後の対応が、過失割合を決める交渉に大きく影響する。焦っていても、絶対やっておいてほしいことがある」という――。(第1回)

※本稿は、藤吉修崇『交通トラブル六法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

市街地でバイクに乗る人
写真=iStock.com/AJ_Watt
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「過失割合」が決まる過程は複雑

交通事故のニュースでよく耳にする「過失割合」。でも実際に事故に遭うまで、その正体を知らない人がほとんどではないでしょうか。「まさか適当に決めてるんじゃ……」なんて不安に思ったことはありませんか?

「過失割合」は、例えば「7対3」といった具合に表されます。これは事故の責任がどちらにどの程度あるかを示した数字ですが、なぜか合計すると必ず10 になります。まるで誰かが「きりがいいから10にしよう」と決めたかのようですが、実際は法律や判例に基づいて細かく定型化されています。ちなみに合計を100にしても問題ありません。

とはいえ、事故の態様はさまざま。定型化されていても、実際の過失割合は複雑な要因が絡み合って決まることになります。

例えば、信号のない交差点でお互いに「自分が先だ!」と譲らず衝突した場合、その瞬間の速度、周囲の状況、道路環境などを考慮して、さらに過去の判例なども踏まえて過失割合が決定することになるのです。

天秤に7と3の数字を載せた人物と交通事故のイラスト

運転手は「かも」を予測し、注意を払う義務

過失割合を決める際には、「どちらがどれだけ注意を怠ったか(注意義務違反)」という視点が最も重要です。過失というのは、専門的な用語で言うと予見義務を前提とした注意義務違反です。わかりやすく言うと、注意すべきときに注意しなかった、つまり「気をつけていれば事故を防げたのに、それをしなかった」ということです。運転する以上、「ここでスピードを出したら危険かも」「歩行者が飛び出してくるかも」と予測して注意を払う義務があります。

具体的な判断材料として、一時停止や徐行義務の遵守、優先道路を走っているかどうか、視界や道路の状況、周囲への配慮(クラクションなどの警告行為)の有無などが挙げられます。結局、「どちらが事故を避けるために何をすべきだったか」を比較して決めるのです。

「7対3ってどうして5対5じゃダメなの?」と疑問に感じた方はいませんか? 先ほども述べたように、過失割合は過去の判例をベースにしたある程度の基準があります。これはなぜかと言うと、同じような事故なのに、毎回バラバラの割合が設定されたり、裁判官の好き嫌いで決められたりしたら納得いきませんよね。だから似たような事故では、統一感のある過失割合が使われるようになったのです。

「歩行者が信号無視しても車側の責任が重くなることが多い」のも、この統一的基準の結果です。車と歩行者のどちらが危険かは一目瞭然ですよね。そのため人に怪我をさせる可能性が高い車の方に「歩行者を守るための注意義務」がより強く求められているのです。