※本稿は、沢渡あまね『任され型』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
ある日突然、新商品開発の依頼を受けたら……
あなたは、埼玉県所沢市にお店を構えるパン屋さんの店長です。
今日は9月1日。オーナーから次のメッセージをチャットで受け取りました。
「親子で楽しく食べられるパンを開発してください! 10月30日の地域のお祭りに間に合わせたいです。よろしくお願いします」
さて、あなたはこの依頼(オーダー)に対してどのように仕事を進めますか?
ある日突然、オーナーから新商品開発の依頼を受けたあなた。
このとき、もしあなたが何も問いを立てず、オーナーと対話もせず、あなたやあなたに近い周りの人たちの想像だけで「親子で楽しく食べられるパンを開発」しようとしたらどうなるか? まずは、起こりがちな残念なケースを見てみましょう。
お祭りまであと10日となったある日、あなたはオーナーを呼んで成果を報告します。
オーナー「わあ、親子で楽しく食べられるパン、できたのね」
あなた「はい、とても苦労しました。これが、そのパンです」
オーナー「んんん? 何やら不思議な形をしているけれども……それに、なんでこんなに真っ黒なの?」
あなた「はい。生地にイカスミを混ぜることでミステリアスな雰囲気を押し出してみました! ハロウィンも近いですし」
オーナー「あ、そっちの楽しさを追求したのね? まあ、いいわ。とにかく、食べてみますね……って、うっ……何これ、めっちゃ辛い、ケホ、ケホ!」
あなた「あ、オーナーそれ『アタリ』です。10個に1個、激辛カレールーを入れてみました。ロシアンルーレットのようなワクワクがあって、楽しめるかと思いまして!」
オーナー「ええっ、そうなの? それにしても辛すぎるでしょ……」
水をガブガブ飲み終え、落ち着きを取り戻したオーナーはあなたにこう伝えました。
オーナー「申し訳ないけれども、やり直して。私が期待した「親子で楽しめるパン」はこれじゃない……。辛いのが苦手な親子や、スリルを求めていない親子にとっては楽しくないし、お店の評判が悪くなりそう……」
そもそも「楽しい」のイメージが、オーナーとあなたとで違っていたようです。

