国際的な経済競争で生き抜く力

一方、本書が取り上げた小国は、シンガポールを除いてPISAでは日本より順位が低いが、IMDの教育指標ではいずれも日本より高い評価を得ている。

これは、こうした国々が社会での実践力を養う大学教育や成人教育に力を入れ、国際的な経済競争で生き抜く力を国民に身に着けさせているという評価だといえる。

たとえばデンマークでは、成人教育が充実しており、多くの成人向け職業訓練が実質無料で提供される。このため、若者から高齢者まで幅広い層が生涯を通じてリスキリングに取り組んでいる。

また、義務教育から大学・大学院までの学費も無料である。こうした背景には、教育は国家を支える人材を育成するものとして、その成果は個人ばかりでなく社会を豊かにするものとの考えがあるのだという。

スイスも高度人材の育成に注力している。特に、国民の6割以上が利用する職業教育訓練制度が重要な役割を果たしており、徒弟契約を結んだ企業での実地研修を通じて、数年の受講で即戦力人材として社会に輩出されていく。

また、スイスには、イギリスのTimes Higher Education誌の世界大学ランキング(2024)で上位100位に入る大学が小国ながら3つもあり(日本は2つ)、人口に占める修士号や博士号の取得者の割合も他の先進国より高い。

高付加価値分野への労働移動を促す

日本の経済が力強く成長し、国民の生活が豊かさを増すためには、企業や産業の新陳代謝が必要だ。儲からなくなった企業や産業が淘汰され、儲けの大きい企業や産業へと人々が転職するようにならねばならない。すなわち高付加価値の分野へと限られた人材を動かす労働移動の促進が求められる。

関山健、鹿島平和研究所 編著『稼ぐ小国の戦略』(光文社)
関山健、鹿島平和研究所 編著『稼ぐ小国の戦略』(光文社)

働く人が新たな分野へと転職するには、そのための知識やスキルを新たに身に着けねばならない。それには手厚い職業訓練や充実したリスキリングの提供が重要となる。

日本でも最近は、デジタルスキルやデータ分析などを社会人が学ぶリスキリング教育を提供する企業や、社会人の学び直しのためのリカレント教育プログラムを充実させる大学が増えている。

こうした取り組みを支援する政府の補助金や助成金もある。これを一層充実させることで、高付加価値分野への労働移動を促すことが必要だ。

人材はあらゆる産業の基盤である。高い生活水準を誇る小国が、職業訓練やリスキリングを通じて人材の競争力を高め、高付加価値分野への労働移動を促していることは注目に値する。

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