海底を徹底的に調査したが…

この調査、遺物の引き揚げなどを行う調査ではありません。目的は主に二つ。一つは、陶磁器以外の遺物を探すこと――つまり船体がそこにあったのか、検証することです。もう一つは、さまざまな水中探査機器を使用して、それぞれの特性を理解し、国内で運用する際の方法や手順などを考えることです。

将来的には、マニュアルのような形で、調査で得られた知見を全国の自治体に提供することを目指しました(これが第一章で紹介した『水中遺跡ハンドブック』に活かされます)。このときは、サイドスキャン・ソナー、磁気探査、サブボトム・プロファイラ、潜水による調査、金属探知機、水中ロボットなどを使用しました。

金属探知機を使った探査の様子
提供=木村淳
金属探知機を使った探査の様子

もちろん、私も参加しています。通常、水中遺跡の探査を行う場合は、探査機器を船に取り付けて同じ海域を行ったり来たりします。すきまができないようにお目当ての海域(エリア)を塗りつぶしていく感じです。

調査範囲が広いとそれが何日も続きます。一度探査機器を取り付けると、あとは退屈な作業だともいえます。ところが、今回は狭い海域で行うので、一つの機械の作業時間は短め。しかも午前と午後では違う装置を使って探査を行うなど、大忙しでした。それぞれの機材をどのように使ってどのようなデータが得られるのか。それを水中遺跡調査委員会で共有するための、いわばテストランのような調査でした。

船の残骸はまったく見つからなかった

機器の説明も兼ねて、それぞれの機器で何がわかったのかを解説したいと思います。

サイドスキャン・ソナーは、海底の様子を可視化する装置。生け簀の残骸などのちょっぴり大きな人工物を見つけることはできましたが、中国から来たと思われる船の残骸やアンカーなどは発見できませんでした。ただ、和船のいかりや西洋型のアンカーはいくつかありました。

サブボトム・プロファイラを使うと、海底面の下の層を断面で見ることができます。遺跡周辺を見てみると、表面のサンゴ混じりの粒の粗い層の下にはすぐに岩盤がありました。堆積もそれほど深くありません。つまり、船体などの大きな遺物が埋もれている可能性はないようです。

磁気探査は、おもに鉄製の遺物を見つけるための装置です。埋もれている遺物も見つけることができるので期待していました。でも、今回の調査では現代のゴミなどは見つけたものの、とくに大きな鉄の遺物はありませんでした。

金属探知機は、手に持って使用するタイプのものを使いました。金属があるとピーピーと音がするあれです。ところどころでピーッと音が鳴りますが、見てみると釣りのしかけや缶のプルタブ(昭和生まれの人には理解できると思います)などでした。

このほか、水中ロボットや潜水作業で広い海域を目視確認しましたが、あったのは陶磁器のカケラばかり……。船体が腐ってなくなったとしても、鉄釘などは残っているはずです。でも、それもありませんでした。