「男系男子」だと皇位継承は行き詰まる
では、有識者会議報告書が本来の課題に対して、「白紙回答」になってしまったのはなぜか。
側室不在の一夫一婦制で、しかも少子化が進む状況なのに、皇位継承資格を「男系男子」という狭い範囲内だけに限定すれば、やがて皇位継承は行き詰まるほかない。だから本気で「安定的な皇位継承」を目指せば、男系男子という“縛り”を解除して、女性天皇も女系天皇も認める以外に打開策はない。
そのことは、平成時代の小泉純一郎内閣の時に設置された「皇室典範に関する有識者会議」の報告書でも、明記されている(ちなみに同報告書の取りまとめに向けたヒアリングには私も応じた)。だから政府(少なくとも官邸官僚たち)は「男系男子」限定ルールを維持することが無理なのは、とっくに分かっているはずだ。
しかし分かっていても、それを真正面から打ち出せない政治的な理由があった。
報告書に隠された「微妙な事情」
今の時点で、女性天皇・女系天皇を認める方向性を前面に押し出せば、どうなるか。自民党内などの男系派が脊髄反射的に反発して、収拾がつかなくなる。それでは問題の解決にはつながらない。
そこで差し当たり、現実味のない旧宮家養子縁組プランを一方に掲げて男系派を懐柔しながら、それとセットで内親王・女王が婚姻後も皇籍を保持されることを可能にする皇室典範の改正にこぎつける。それでとにかく将来に望みを託するしかない。
……という役人的な発想から、あえて皇位継承問題には立ち入らず、皇族数確保策にスリ替えたのが、今回、高市氏が「尊重する」と述べた報告書の内実だ。
しかし、高市氏の答弁を聴くと、その辺りの微妙な事情をまったく知らず、理解できていなかった。
「男系男子」の未来は絶望的
しかも、男系男子限定の固定化が「皇統の確実な安楽死を招く」ことを、高市氏は分かっていないようだ。
これについては以前、皇統の存続可能性について、京都大学准教授の川端祐一郎氏がさまざまな試算をしている(『表現者クライテリオン』令和4年[2022年]3月号)。その中で、最もリアルに近い前提条件での数値シミュレーションは、暗澹たる未来を示していた。
すなわち起点を男子1名とし、有配偶率90%、既婚者の平均子供数1.5人、30歳で結婚し、32歳で第1子、平均寿命81歳という設定で1万回のシミュレーションを行うと、皇統が100年未満で途絶える可能性が87.2%という絶望的な結果だった。
この結果を踏まえて、同氏は男系男子限定を前提とした場合、「複数の皇位継承資格者の存在と、2人を上回る子供が継続的に誕生することが必須である」と述べていた。
しかし、数値的にはそうであっても、およそ現実的には可能性のない想定だ。したがって、その「必須」を満たせない以上、男系男子による皇統の維持は無理(!)という結論になる。
